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□うたたね
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「おい…起きろ」


家に帰って着て早々リビングで気持ちよさそうに寝ている女性にため息が漏れた


いつもリビングでは寝るなと言ってあるのに
豆腐に鎹とはまさにこのことだ


「…スミレ」


起きる気配もない
これがコウやユーマたちなら叩き起こすのだが、それもできない

いやできると言えばできる
正確にはしたくない、か…


自分の中に芽生えている彼女への甘えに笑いがこみあげてきた
諦めて寝てるスミレの隣に腰かける


この寝顔をずっと見ていたいと思う俺はもうだいぶ末期だ

自然とスミレの髪に手が伸びた


「………ぅ…」


首に見える牙の痕さえも愛おしい



俺は何をしているんだか…



きっと寝ているスミレに気が緩んだのだと思う





「お前を離すつもりはない…愛している」





こんな言葉を口にしてしまったのは





気持ちを言葉にするのは苦手だ
どうしても相手を読んでしまうから、自分の言動も素直になれない

だから、正直スミレを不安にさせてしまっているところがあると自覚している



「すまないな…」



スミレの頬にキスを落とす


逃げだとしても
今だけはスミレに本心を伝えようと思った



寝顔に免じて許してやろう



「いつまで寝たふりをしている」

「……!?」






俺の声に飛び起きた彼女が逃げないように俺はきつく抱きしめた





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