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□ふわりふわり
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教会のドアが勢いよく開いた


…………え?


全身真っ黒な服に包まれた人が入ってきた
息が荒い
お互いに見合った状態が続く

全身で危険信号を出していた
逃げなきゃ…裏のドアから…逃げなきゃ…

そう思っているのに体はどこも動かなかった


そうしてる間にもじりじりと距離を詰めてくる相手
手には赤く光ったナイフがある


どうしよう


「…っ……」


膝が笑って立っているのがやっとだ


笑っている?



髪の毛をつかまれた

助けて
そう叫んだつもりだったのに私の声はかすれていた


「運のつきだな…」


死ぬんだ
そう悟った


マンガやドラマのようなことは起こらない




ナイフが振り上げられた






シュウ…





焼けるような痛みが体に走った



赤い血が床に流れていく
立っていることなどできなくて床に倒れこむと、私を刺した人は足早に教会を出ていった


このまま一人で死ぬのか…


目の前がかすんでいく


「シュウ…」



愛しい人の名前は彼に届かずに転がった



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