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□口を開けて
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ベッドの上で眠るシュウは苦しそうだ
額には汗がうっすら浮かんでいる


「ん…」


レイジさんに頼んだ薬はまだだろうか



「失礼します」


ちょうどいいタイミングで入ってきたレイジさんの手には薬と水


「ありがとうございます」

「風邪をひくなんて…穀つぶしにも程があります」


うんざりだという表情をしつつも薬をしっかり調合してくれるレイジさんも
やっぱり心配してくれているのだと思う


「では私は失礼します」






静かな部屋



シュウがうっすらと目を開けた


「………」

「具合は?」

「さい…あく」


かすれる彼の声


「何か食べたいものは?」


シュウは何も言わずに私の手を取って指にかみついた


「熱いね、シュウ」

「…んっ…は」


ほとんど飲まれている感覚はなかった
やっぱり食欲もないようだ


「薬飲めば少しは楽になるよ」

「いやだ」

「子どもじゃないんだから」

「飲まなくても治る…」



レイジの薬はやたらと苦いんだ
かつて飲んだことがあるようで、思い出して顔をゆがめてシュウはつぶやいた


「でも…」

「そんなに俺に飲ませたいなら、口移しでもすれば」


風邪でもこのドSというか意地悪は健在だ



「とにかく俺は飲まない」


また目を閉じたシュウにため息が漏れた


「シュウ、薬」






無視だ




でも飲ませないと治らない





やはり、口移ししかないのか





苦いんだろうな




私は手元の薬をじっと見つめた






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