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□口を開けて
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「おいしいたこやきの店を見つけたの!」

「お!マジか!」

「たこやきよりも僕は甘いものがいいですね」

「カフェとかも探してみるね」




リビングでみんなと話していたら
急にドアが開いた


「ちょ…シュウ?」


顎の先やら髪の毛から滴が垂れている
全身ずぶぬれで、濡れ鼠という言葉がそのまま当てはまる


「どうしたの?」

「……なにもない…だるい…寝る」

「風邪ひくよ」

「…は?風邪なんてひくわけないだろ」



わしゃわしゃと髪の毛をかき乱せば水滴があちらこちらに飛んだ
足元には水溜り

どうせ傘なんてだるい
走るのもだるい
もういい

とか思って帰ってきたに違いない


それどころかもしかしたら、雨の中どこかで寝ていたという可能性もある

じっとシュウを見つめる
このダル男は言葉も少ないから見て感じ取るしかない


「……そんなに見るな」

「あ、ごめん」

「寝るからもう行く」


顔がほんのり赤いのは照れているのだろうか
にやけそうになるのを堪えてシュウの傍まで駆け寄る


「一緒に寝るのか?」


意地悪な笑みを浮かべる彼は恐ろしく妖艶だ


「…ねる」



満足そうにそう言ってシュウが一歩足を出した時だった




ふらっ





「ちょ…しゅ…シュウ?!」


目の前でふらついた彼
咄嗟に体を支えようとするけれど、さすがに無理で
そのまま二人で床に倒れこむ



「何やってんだ?お前ら」

「アヤト!助けて!シュウが!」

「なんで俺様が」


あつい
いつもは冷たい彼の体があつい


「…ん…」


我に返ったシュウが立ち上がろうとする
無理だ
そんな熱で


「シュウ!立たないで!」

「うるさい」


顔が赤かったのも熱のせいか
何が風邪なんてひくわけないだろ、だ
風邪ひいてるでしょ!


ふらふらとおぼつかない足取りで部屋へと向かうシュウは
またすぐにダウンして壁に寄り掛かった


「アヤト!」

「ちっ…仕方ねえな」


二人でシュウを支えて部屋まで運ぶ
アヤトに感謝だ



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