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□一人占め
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「シュウもバカ?」
また来た
んふっと笑って俺を見下ろす弟に舌打ちをした
もったいない
そんなこと言われなくても分かってる
たぶん、もうスミレは俺のもとに来てくれない
「シュウがそんなに放任なら俺がっ……おぉ、こわいなぁ〜」
冗談でも殺してやろうかと思った
身体を起こせば身軽に去ってく弟にうんざりする
起きてしまった以上動くしかない
俺が動いたことにも反応しない兄弟とスミレ
兄弟はいいにしても彼女に反応されないのはむかつく
兄弟とはいえ他の男には変わりない
あんたは俺のだろ
自分の心の狭さに嫌気がさす
スミレのことになるといつもの怠さなんて消えて、奥でずっと独占したいとか考えてしまう自分がいる
気づかれないままゆっくりと彼女との距離を縮める
一体いつになったら気がつくんだ
「……一人占めしたい」
遊びを楽しんでいるスミレを後ろから包むように抱きしめる
「え?え?シュウ?」
驚いて身を硬くするスミレが可愛くて仕方ない
「どうしたの?」
「そんなのやらないで俺だけ見てろ…」
え
という声が聞こえた
腕の中と外野から
「おい、シュウ!今ゲームしてんだよ!」
「…うざい、てかお前らだけで勝手にやってろ」
抱きしめる力を強めると手を重ねられた
優しく諭されるような気分になる
彼女は俺の方を向かない
でも、伝わっている
「シュウが甘えてくるからみんなでやっててね」
癪にさわる言い方だ
今にでも首元から吸い尽くしてやりたい
「どこで眠るの?」
「…ソファーでいい」
1人がけのソファーに二人で横になる
もちろん狭くて、くっついてないと落ちてしまいそうだ
まあ、それが狙いでもあるのだけど
「なんだか今日は可愛いね、シュウ」
抱きつく彼女の温もりが心地よくて、眠くなってきた
誰にも渡したくない
渡さない
俺のものだ
「おやすみ、シュウ…私はシュウのものだよ」
その言葉を聞いて俺の意識は途切れた
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