虎牛設定(補完)

□その3
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#28

作成:2019/04/30




「十四郎! 誕生日のプレゼント、何が欲しい!?」

「マヨ!」

「……うーん、それじゃあ普通すぎるじゃん。誕生日なんだから、もうちょっと特別なものじゃないと」

「特別? ……じゃあ、世界で一番美味しいマヨ!」

「世界で一番? それなら特別だな。どこで売ってるだろ」

「大きな町とか?」

「だったら今から出発して買ってくる!」

「え? でも村の買出しはまだ先だよ?」

「うん、だから一人で行ってくる」

「危ないよ!」

「我が家の家訓なんだよ。12になったら一人で旅をしろって」

「でも……」

「大丈夫! 必ず世界一美味しいマヨ買ってくるからさ!」




「……って言って銀時が出かけてから、もう10年……」

カレンダーを見つめて牛は深い溜め息をついた。

幼馴染の虎の銀時が十四郎の誕生日プレゼントを買いに旅に出てから、10年目の誕生日。

「マヨを買うのにどんだけ時間かかってんだ。バカ虎」

そう腹を立ててみたのだが、すぐに悲しそうな顔になった。

『……分かってる……今にマヨを探してるとか、そんなバカじゃねーって……きっと、旅の途中で会った可愛い虎と付き合って幸せにやってるんだ……』

虎の帰りを待ってるのは自分だけでいい。

『……それでいい……何かあって……死んじゃってるより……ずっとそのほうがいい……』

心配するのも悲しむのもやめて、怒ることで気を紛らわしてきた。

だけど今日はちょっとしんみりしてしまい、浮かんだ涙を手で拭う。

他の友達たちが銀時の代わりに誕生日を祝ってくれるのだから、元気を出さないといけない。

そう思いながら家を出て待ち合わせの場所に行こうとしたら、

「とーうーしーろーおーっ!!」

聞きなれない声、だけどちりっと胸が騒ぐような声で名前を呼ばれて振り返る。

自分と同じ背格好の大人の虎が、満面の笑顔で駆け寄ってきた。

声も見た目も大人になってしまったけれど、それは間違いなく旅に出たまま戻らなかった銀時だ。

「……銀時?」

「ただいまぁぁぁ!! でっかくなっても十四郎はやっぱり美人だなぁぁぁ!!」

十四郎を上から下までニコニコ嬉しそうに見て、そう変わらぬ呑気な顔で言う。

十四郎のほうはそれどころじゃなかったのに。

「い、今まで何してたんだコラァ」

「え? 忘れちゃったの? 世界一のマヨを買いに行ってくるって言ったじゃん」

"そんなバカ"だった。

「……ず、ずっと探してたのか?」

「うん!! じゃーん!! 見つけたぞ、世界一美味いマヨ!!」

ドヤ顔で銀時が袋から取り出したマヨを受け取る。

確かにこのへんでは売ってない、パッケージだけでも高そうに見えるマヨだ。

チラリと銀時を見ると、十四郎が食べて感想を言うのをワクワクした顔で待っている。

ので、十四郎はマヨを取り出し口に含んだ。

良い材料を使っている美味しいマヨだった。

それでも所詮マヨはマヨなのだ。

「どう? 美味いだろ? 世界一だろ?」

だけど、銀時が嬉しそうにそう聞いたから、それは世界一美味いマヨになった。

銀時が側にいてくれるから、それは十四郎にとって世界一美味いマヨだ。

「うん、美味い。ありがとうな、銀時」

「どうしたしまして!」

泣きそうになるのを我慢して礼を言った十四郎に、十四郎の気持ちも知らずに満足気な笑みを浮かべる銀時だった。



おまけ

久しぶりに村に帰ってきてはしゃぎ疲れ、眠ってしまった銀時を見ながら、

『迂闊なことを言わないようにしよう。バカだから』

そう心に誓う十四郎でした。



 おわり



虎……バカですねぇ(笑)
いつもは牛のほうをバカっぽくしがちなんですが。
バカな話だけど、待ってる十四郎のシーンでは泣いてしまう私(笑)

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