虎牛設定(補完)

□その2
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#16

作成:2017/05/06




「十四郎、誕生日おめでとう」

「ありがとうっ」

仲間たちに囲まれて牛は嬉しそうに笑った。

「じゃあ、これ、いつものプレゼントだ」

「ありがとうっ!!」

更に満面の笑みを浮かべて受け取ったのは、全員が毎年同じ物になってしまうマヨネーズ。

送る側としてはなんの捻りもなくてつまらないプレゼントだったが、十四郎がものすっっっごく喜んでくれるので同じ物になってしまうのだった。

マヨのボトルに囲まれてニコニコしている十四郎を見ていれば、仲間たちも嬉しい。

だがその中で、不満そうな顔をしているのが一匹。

「どうした、銀時?」

半年前、十四郎が連れてきて村の仲間になった銀時は、みんなが虎だと警戒するのと裏腹に、十四郎の側でいつも楽しそうにしている無邪気さでいつの間にか打ち解けていた。

その銀時が、目の前にお菓子が並んでいるのにもかかわらずしかめっ面をしている。

「銀時?」

「……なんで誕生日だって教えてくれなかったんだ?」

呟くように答えた銀時に、近藤たちは“知らなかったのか”と驚いた顔をしたが、十四郎が平然としているということは故意だったようだ。

「銀時は参加してくれるだけで嬉しいよ」

「……俺だって何か……」

言い掛けて銀時はその続きを飲み込むと、「ちょっと出かけてくる」と言って部屋を出て行ってしまった。

ぽかんとしている十四郎に、総悟の呆れた声が聞えてくる。

「あーあ、虎を泣かせるたあ、どんだ性悪牛でぃ」

「!? な、泣かせてねー!」

本当のことを言っただけなのに、総悟はさらに呆れたような溜め息をつくので、捕まえてやろうとしたら近藤にまで苦笑いされた。

「トシは余計な気を使いすぎだなぁ」

「銀時はまだこの村に来たばっかりで、プレゼントを用意させるのは悪いと……」

「気持ちは分かるが、銀時だって同じだぞ?」

そう言われて、不機嫌に見えた銀時の表情が悲しそうだったようにも思えてきた。

それから十四郎は戻らない銀時を心配して落ち着かない時間を過ごしていたが、日付が変わる少し前に家の扉がノックされる。

「銀時っ!」

あちこち土で汚れた銀時は、十四郎が謝罪を口にする前に右手を差し出した。

その手には良い匂いのする草が握られていて、

「……やる……」

それが十四郎へのプレゼントらしかった。

十四郎が大好きな美味しい草だけど、この時期にはまだ山の向こうにしか生えていないものだ。

あれからそこまで取りに行ってくれたのかと思ったら、余計な気を回してしまったのが申し訳なくなった。

「……銀時……俺……ごめん……」

「違う」

「……?……」

「誕生日のプレゼントだぞ」

そんな顔をさせたかったわけじゃない。

さっきみたいに笑って欲しかっただけ。

銀時が悲しかった理由も、今どうして欲しかったのかも察して、十四郎は本当に嬉しそうに笑った。


はぴば、十四郎!


 おわり



虎牛はイベントネタに苦労するんですよ……前のと被ってない?(笑)
大人の二人で書きたかったのに、いつものように子供になっちゃいました。

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