虎牛設定(補完)
□その2
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#14
作成:2016/12/23
「んだ、ヅラ。その格好」
「ヅラじゃない、“サンタ”だ」
銀時は自分を拾って育ててくれている恩義ある龍を怪訝な目で見つめた。
真っ赤な暖かそうな服を着てもさっとした白いヒゲをつけた桂は、今日は“サンタ”とかいう奴らしい。
よく見たら連れのエリザベスも、ダンボールで出来た大きなツノと、何故か赤い鼻をつけている。
「西洋ではな、今日はクリスマスという日で、サンタというおじいさんが子供たちにプレゼントを配る日なんだ」
いろんな世界を旅しているという桂は、白い袋から箱を取り出しながら、
「お前がちゃんと良い子にしてたからな、プレゼントをやろう」
そう言ってそれを銀時に差し出した。
「なっ……べ、別に良い子になんかしてねぇぇぇ!!」
“良い子”と言われると反抗したがる年頃の虎は真っ赤な顔でそう叫ぶが、そんなこともお見通し龍は、
「はっはっは。照れるな、照れるな。ほら、お菓子をあげよう。美味いやつだぞ」
なんてさらりと流して、甘い匂いのする箱をくれた。
いらないと言いたいところだったが、中身は銀時が好きな菓子のようなので、
「し、仕方ねーから貰ってやる」
素直じゃない態度で箱を受け取った。
そんな風に生意気な虎の銀時はけっして可愛い子供じゃなかったけれど、それでも長い年月を生きている龍には楽しかったのかもしれない。
それを、数年後、桂とエリーと別れ、十四郎のいる森に残ってから銀時は気が付いた。
一緒に居て楽しいから、喜ばせたいと思うのだと。
「どうしたんだ、銀時。その格好」
「銀時じゃない、“サンタ”だ」
あのとき桂が着ていた服に似せた、かなり不恰好な赤い格好をした銀時は、顔も赤かった。
十四郎を喜ばせたいと頑張ってみたが、やっぱり恥ずかしい。
「サンタ?」
この森辺りは田舎なのでクリスマスという行事はなく、桂に聞いたままを説明してやると、十四郎は目を輝かせる。
「そんな楽しい日があるのかっ!?」
「う、うん。十四郎が良い子にしてたから、プレゼントやる」
十四郎の好きな美味しい草。
この季節には見つけるのが大変だったが、なんとか袋にいっぱい集めることができた。
十四郎はくんくんと鼻を鳴らして、大好物の匂いにぱーっと笑顔になる。
袋を受け取って、
「ありがとう、銀時…じゃない、サンタさんっ!」
本当に本気で嬉しそうな十四郎に、銀時も嬉しくなり、小さく反省。
あの時…子供の時も、こんな風に喜んでやったら桂も嬉しかっただろうに。
次に会えるのはいつか分からないが、十四郎みたいに笑って礼を言ってやろうと思う虎だった。
おわり
…銀土つーか…桂の話みたいになっちゃったね(笑)
ま、たまにはいいか。