虎牛設定(補完)

□その1
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#3  2015/06/16


午後のぽかぽか暖かい原っぱに、いつもの昼寝タイムで集まった牛、馬、鼠。

が、一匹が暑苦しいほどの気合を入れているので眠れそうになかった。

「今度こそお妙さんとちゅーするぞ!」

意気込む馬だったが、牛と鼠はノーコメント。

この場だけ見れば、初キッスを目指すバカップルの片割れのようだが、バカップルどころか片想い。

もっと言えば、超絶嫌われている可哀相な男なのに、キスなんて地球が滅んでもあり得そうにないと鼠は辛辣に思った。

牛のほうはといえば、別な理由で無口だった。

『“ちゅー”ってなんだろ』

そもそも意味が分かっていなかったのだが、ここでそれを聞いてしまうと鼠にバカにされるので我慢する。

天然おバカキャラだと思われがちの牛だったが、それなりに学習しているようだ。



夕方になって家に帰ると、今日は森の見回り当番だった虎も帰宅していたので、さっそく聞いてみた。

「“ちゅー”ってなんだ?」

ああ、また誰かが余計なこと言ったんだな、と虎は小さくいやそうな顔をする。

“箱入り”の牛は好奇心旺盛で何でも知りたがるため、一緒に暮らし始めてから虎は苦労していたのだ。

しかも、虎があえて避けてきたネタを拾ってきた。

出会ったときからずっと牛が可愛くて、いろいろやっちゃいたいところをぐっと我慢してきたのに。

誤魔化すことも考えたが、そろそろワンステップ踏んでやりたくなった。

「…キス」

「キスって?」

「好きなやつとするもん」

「じゃあ俺と銀時でもできるか?俺は銀時好きだぞ」

『でた、ベタじゃね?ベタすぎじゃなね?定番ネタでもひどすぎじゃね?』

虎がよけいなダメ出しをしながら難しい顔をしているので、牛は拒絶されているのだと勘違いしてしまったようだ。

「…銀時は俺が好きじゃないのか?」

耳をぺたんと寝かせてしょんぼりそう言った牛の可愛さの前に、理性とか我慢とかまったく効き目がなかった。

『ベタだって知るかぁぁああ!!』

小さく溜め息をついて仕方がないなというフリをしながら、内心は心臓ドキドキ、バクバク。

「分かった。目つぶれ。いいって言うまで開けるなよ」

「うん」

素直に目をつぶった牛に、虎はそっと唇を重ねる。

ビギナーだけど虎は頑張って3秒ねばり、『うっわ、超やわらけっ、超かわいいっ』そう思いながら離れて横を向き、飛び出しそうな心臓を押さえつけていると、牛が今だ目を閉じてじっとしているのに気が付く。

素直な良い子なのだ。

「……開けてもいいぞ」

言われてようやく目を開けるが、牛はとても不満そうな顔をしていた。

「今のがキス?」

「…そ、そうだよ」

「目つぶってたら分かんないぞっ。もう一回っ」

『そうくるかっ!!』

行為そのものの意味がわかっていないようで、虎を真剣な顔でじっと見つめているから誤魔化すのは無理そうだ。

心臓が耐えられるか分からないがもう一回できるのは嬉しいので、目をばっちり開けて待っている牛にせめて自分だけでもと目を閉じて顔を寄せる。

『うわっ!?』

一方、しっかり見ているつもりの牛だったが、近づいてくる虎の顔に心臓が跳ね上がり、急に恥ずかしくなってきて目を固く閉じてしまった。

記録更新して5秒後、身体を離した虎は、牛がぎゅーーっと目を閉じて真っ赤になっているのを見て笑ってしまう。

「なに目ぇ閉じてんですか?それじゃ分かんないだろ?もう一回する?」

「ううう、うるさいっ!」

ようやく自分を意識してくれたらしい牛が可愛いくて、嬉しい虎だった。





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…ネタメモから短いネタを探してたら、こんなものが出てきたので書いてみました。
虎牛の牛は、どうしてこうもバカっぽいのが似合うのでしょうか(笑)
いや、私の読書傾向のせいだとは分かってるんですけどね……
〜12歳ぐらいの設定で、ほわほわんとしてくれたら幸せなんです。



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