学園設定(補完)

□3Z−その1
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act.2


休み時間、ずっと携帯を見つめてた。

授業中、絶対に鳴るはずないけどポケットの中で動かないか待ってた。

毎日待っているのに、一番欲しい人からの連絡がない。



春の大会を控え休日に登校しての部活が終わってから、更衣室までダッシュし携帯を見るが着信履歴もメールもなくて、土方は深い溜め息をついた。

『なんなんだよ……あのクサレ天パ…ダメ教師…糖尿ヤロウ……』

携帯を握り締めたまま悪態を並べる。幸いその手のネタには事欠かないぐらいに銀八はいい加減な教師だった。

そんな銀八に土方が告白したのは4月の半ば。

いい加減さをまだ知らないせいか、銀八は今年の新入生(もちろん女子)にやたらと人気があると聞いた。

バレンタインに遠まわしに意思表示をし、ホワイトデーにそれっぽいお返しを貰っていた土方としては「あいつにアピっても無駄なのに」と言ってみる。

だが沖田に、

「そいつぁ分からねーでしょう、選り取り見取りとなれば嫁さん候補の1人や2人欲しくなるのが男でさぁ」

などと言われては告白を決意するしかなかった。

「付き合ってくれよ」

「いいよ」

内心いっぱいいっぱいで笑うこともできず素っ気無い言い方をした土方に、銀八はあっさりと答えて笑った。

こうなるのを待っていたかのような笑みで、土方はOKを貰ったのに悔しい思いをさせられる。

そのあとは、夕飯に2人でお好み焼きを食べに行った。

土方は制服だったし、学校帰りにある店で誰に見られるかも分からないから、さっさと食べて帰るだけの短い時間だったがすごく嬉しかった。

教師と生徒、誰にも言えない禁断の関係の中、授業中に横を通りすがる時にさりげなく触れていったり、プリントに待ち合わせ時間を書いてこっそりデートしたり、授業をサボって会いに来た土方に「悪い子にはおしおきだな」と迫られたり……。

そんな昭和の少女マンガのような展開を期待して一人ドキドキしていた土方だったが、あれから口もほとんどきけないまま二週間が過ぎ去ってしまった。

しかも今日は…。

「あの…土方くん……」

無意識に制服に着替えていつの間にか更衣室を出てきていた土方は、校舎への通路の途中で声をかけられ我に返る。

見覚えがある程度の他のクラスの女子が立っていて、土方にかわいいラッピングがされた箱を差し出した。

「た、誕生日おめでとうっ。これ、お菓子作ったの、食べてねっ」

そう言って土方に渡すと、ものすごい速さで校舎へ入って行った。返品されないように逃げたのだろうが、その元気は土方にはない。

わざわざ休日の学校に制服を着てまで届けに来てくれる子もいるのに、今日は土方の誕生日なのに、銀八から何の連絡もないのだ。

知らないわけはない。

去年クラス替えの自己紹介のときに、

「5月5日は絶対休みでかわいそうだなぁ。俺の10月10日はハッピーマンデーのおかげで祭日じゃなくなったからみんなで祝ってくれていいぞぅ」

「先生、今年の10月10日は土曜日です」

「まじでか!」

なんてやり取りをしたからだ。

あの時はお互いにこんな関係になるとは思ってなかったけれど、俺ははっきり覚えてる。

なのに、なんで何も言ってくれないんだ。なんで、会いたいって思ってくれないんだ。なんで、今日側にいてくれないんだ。

まるであの告白自体がなかったみたいに……なかった……あれ?


「で?これからどうするんだ?」

「今日親がいねーから晩飯食って帰りたいんだ」

「そうだなぁ……」


……まさか……“飯に付き合え”だと思ってるとか!?いやいやいや、そんなベタなっ!!!

いくらなんでもそんな展開はないだろうと思っても、あれ以降まったく接触のないことを考えると否定できなくなってきた。

通路から職員用の駐車場が見えて、銀八のスクーターが置いてあるのが分かった。

休日とはいえ部活動で生徒が登校している以上、教師も交代で出勤させられるのである。

学校にいるのに連絡も会いにも来ないなんて、本当にあの告白を分かってないのだろうと段々ムカついてきた。

力強い足取りで、禁煙の職員室には居場所のない銀八の根城へ向かう。



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