原作設定(補完)
□その7
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#62
作成:2015/05/27
1 / 2真選組副長室で土方十四郎は預金通帳片手に苦悩していた。
先日の“宝くじ事件”で抱えた負債の返済方法について悩んでいるのである。
『万事屋のバカが銀行から強盗した3億円を、総悟の大バカ野郎がバズーカで燃やしちまいやがって。あの後買った宝くじも当然ハズレたし、何で俺が3億円なんて借金を背負わなきゃならねーんだっ』
↑自業自得。
いくら通帳を眺めても無い袖は振れない。
高給取りと思われがちの真選組だったが、所詮田舎侍の集まりの公務員。
しかも土方には毎日手放せない嗜好品(煙草、マヨ)があり、それだけでも懐が痛いのだが、
『あのクサレ天パ、デート代だ、飯代だ、酒代だ、宿代だってほとんど俺にタカリやがるから』
すっかりヒモ体質のマダオな恋人がいるせいで、なかなか貯金ができないでいた。
『3億円……定年まで勤めたとして給料とボーナス足してのなんだかんだで……毎月40万あれば返済できるか………って、給料遥かに超えてるわぁぁああ!!』
悶々と考え続ける土方の後ろからそっと声がかけられる。
「言い忘れてやしたが」
「どぉわぁぁああっ!!なななな…総悟っ!驚かすんじゃねぇぇええ!!」
過敏に驚く土方に、しら〜っとした顔で沖田が言った。
「3億円の返済ですが、毎月200万だそうです。足りない分は近藤さんが補填することになってるようなんで、近藤さんに迷惑かけねーよーに気張って働いてくだせぇ」
「にっ!!!???んなもん払えるわけ……」
反論する前に沖田はさっさと部屋を出て行ってしまった。
『40万も無理だけど、200万なんて俺1人でどうにかできるわけ………』
頭に浮かんだ白くてもふもふしたものを振り払う。
「あいつが何の役に立つって言うんだ(断言)。……………だけど他に方法が…」
「というわけで」
「何が“というわけで”ですかぁ?いきなりこんな場所(万事屋和室)なんか引っ張り込みやがって……え?その気?していいの?」
ちょっと赤面しながら伸ばしてきた銀時の手をピシッと叩き、土方は神妙な面持ちで言った。
「例の3億円だが……毎月200万の返済を迫られている」
「…ふ〜ん…」
鼻をほじりながら関係ないという顔をする銀時に、額に青筋が浮かびそうになるのを必死に堪えた。
「おめーにも責任あんだから、一緒に……」
「あ〜?誰に何があるって?そもそも、土方くんが宝くじネコババしたからこうなったんじゃね?銀さんの落し物だって分かってたのに、独り占めしようとしたよね?それって酷くね?超傷付いた俺に、これ以上何をさせようっていうんですかぁ?」
至極尤もなことをズバズバ言われてしまい、尚且つこの件に関しては全面的に土方に非があったので反論しようがない。
下を向いたまま呟くように言った。
「………そうだよな………俺が悪ぃよ………分かった、俺が1人でなんとかするわ……しばらく……返済終わるまで会えねーけど、元気でな」
立ち上がり背中を向けた土方は、がっくりと肩を落としてトボトボ帰ろうとする。
まるで死地に向かう雑兵のような姿に、さすがに言い過ぎたと思った銀時が、
「……待てよっ……」
そう言って引き止めたので、土方は背中を向けたままにや〜〜りと笑った。
それから2人は稼いで稼いで稼ぐまくった。
幸い銀時の仕事は万事屋で、小さいのから大きいのまで依頼を受けまくって稼いだ。
銀時はもちろん、土方も仕事終わりや非番には手伝いという名目で合流した。
いきなり働き者になった銀時に新八と神楽は怪訝そうな顔をしていたが、土方に口止めされているので言えないまま一ヶ月……
「……にひゃく……」
万札を200枚数えたところで、銀時はばったりと畳に倒れ込む。
「よくやったな、万事屋。じゃあ、俺はこれを届けてくるから」
そう言って金を持った土方が立ち上がり部屋を出て行く前に、倒れた銀時の手をきゅっと握る。
「大変だけど、毎日お前に会えて嬉しいよ。また来月分も頑張ろうな」
土方らしくないデレを言ってくれたが、疲労困憊の身体では何もできそうにない。
「……これを……毎月……」
銀時の呟きは誰もいない部屋に虚しく消えた。
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