原作設定(補完)

□その6
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#52

作成:2015/05/15




夕食の終わった万事屋にかかってきた電話。

ジャンプ片手にすっかりくつろぎモードだった銀時がやる気のない声で出ると、

「………マヨリン……」

受話器の向こうから聞こえた呟き。

「あ?………土方?」

「……マヨリン……ううっ……」

声の調子はいつもと違ったが確かにその声は土方だったのに、答えずもう一度呟き、電話は切れた。

「マヨリン?」

それは彼が銀時の次に大好き(銀時の希望的認識)なマヨネーズのメイカー名だ。

『マヨリンと間違えて俺に電話してきたのか?……って、なんでマヨリンに電話するんじゃーい!』

1人頭の中でノリツッコミをしてから、

「……またかかってくんだろ」

と再びジャンプを読み始めるが、だんだん落ち着かなくなってくる。

意味は分からないし、電話はかかってこないし。

「ちっ」

舌打ちすると、神楽に出かけてくると声をかけて屯所へ向かった。


門番に聞いたら土方は在宅中でそのまま中に入れてもらうと、途中で沖田に声をかけられる。

「旦那」

「よう。副長さんいる?」

「いますぜ、一匹ほど」

「だよね。なんか変な電話かかってきてさ〜。そういや、仕事忙しいんじゃねーの?」

「昨日の夜にやっと片付いて今は後処理で手一杯でさぁ」

そんな会話をしながら案内された部屋には、真選組の隊服を着た変なぬいぐるみがぽつんと置いてあった。

「副長〜、旦那が来ましたぜぃ」

「……なにこれ」

「副長でさ」

至って平然としている沖田。聞き方を間違えたようだ。

「………土方くんは?」

「土方さんなら部屋にいまさぁ。風邪引いて寝込んでまして」

「……これは?」

「仕事しようとするんで人質にとってきたんでさぁ」




「大人しく寝てねーとこいつの腹ぁ割いて腸(綿)ぶちまけるぜぃ」

「ううっ、マヨリンんんんんっ」(体温39度、錯乱中)




副長(マヨリン人形)を連れて副長室へ向かう途中、山崎にも会った。

「旦那、副長どこへ連れていくんすか」

こいつも悪ふざけの最中らしい。面倒くさいのでスルーして銀時は聞いた。

「……ていうか、土方、大丈夫なの?」

「あ、はい。根つめ過ぎるとドッとくるタイプなんです。昔からよくあったんですよね」

殺しても死ななそうなのにと思っていたから、意外な一面を知らされる。

「最近は上手いことちょこちょこ息抜き出来てたんで、大丈夫だと油断してたみたいです」

それでも全部片付いてから倒れるなんて至極土方らしいと言える。


念のために副長室の襖をノックしてみたが返事がないので部屋に入ると、土方は布団で息苦しそうに寝ていた。

寝込んでいる姿なんて、当然、初めて見る。

「……うう……」

うなされているようなので布団の脇に座ると、マヨリン人形をぼふっと顔に乗せてやった。

気が付いて視界に人形が飛び込んできたものだから、

「マヨリンっ、マヨリン…マヨ…」

と名前を呼んでぎゅーーーーっと抱きしめたかと思うと、そのままぐーーーーっと寝てしまう。

銀時にはまったく気付かなかった。

「ちったぁ俺の名前も呼べよ」

電話からずっとマヨリンの名前しか聞いてない。

ふてくされながら額に触れ『けっこう熱いな』と思いながら、頬、首に触れてやる。

銀時の冷たい手が気持ち良かったのか、擦り寄ってきた。

それだけで気分が良くなっているのだから、『我ながら単純だよな』と自覚してしまう。

山崎が言っていた”上手いこと息抜き出来てた“で、前に会ったときのことを思い出した。




万事屋に泊まりに来た土方。

早速布団に横になったので、一緒に寝てゴソッと身体に触ったらその手を叩かれた。

「やめろ、疲れてんだから寝かせろ」

「鬼ですかっ!!仕事忙しいって全然会えないでいんのに、いきなり来て一緒に寝るだけとかっ、抱き枕か俺はコノヤロー!」

「この抱き枕じゃねーと疲れがとれねーんだよ」

そう言ってぎゅーーーーっと抱きついてくる土方に、銀時は真っ赤になり、ブツブツ言いながら大人しく寝るしかなかった。




「………あれか………可愛すぎんだろ」

思い出しただけで照れてしまう。

『あんなんで息抜きできるんだったらいくらでもしてやるのに、素直じゃねーな』

銀時が触れているからかマヨリンが戻ってきたからか(前者希望)、土方が静かな寝息を立て始めるのを見つめた。


土方が夜中に目を覚ますと、銀時が布団の横で寝ていた。

自分がしっかりとマヨリンを抱き締めているに気付き、

『ああ、マヨリン取り戻しに来てくれたんだなぁ』

沖田に連れ去られたマヨリンを助けて欲しくて万事屋に電話をしたのを思い出した。

ぼんやりとした目で銀時を見つめ、もぞもぞと動き出す。


『……なんか熱い……』

今度は銀時が目を覚ますと、土方が2人の間にマヨリンを抱っこしたままくっついて寝ていた。

ちゃんと布団が掛けられていたので土方の体温が篭って熱かったようだ。

可愛い寝顔にむらむらしそうな気持ちを、頭を振って落ち着かせる。

『早く元気になってください、300円上げるから』


翌朝、布団から起き上がり庭への障子を開けて、朝の冷たい空気を吸い込んで背伸びをする…土方。

「う〜〜〜ん。熱下がったっ!」

「下がったんじゃねぇえええ!!うつしたんだろうがコノヤ…ゴホッゴホッ」

300円の御利益か土方はすっかり元気になったが、風邪菌ごとまるっと引き受けてしまった銀時。

お約束。





“マヨリン”はアニメのマヨリンじゃないのを想像してください(笑)
あの人形抱き締めてたら変態くさいじゃないですか。
……まぁ、なんてことない普通の話でしたね……



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