原作設定(補完)

□その4
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♯37

作成:2015/04/28




「俺と仕事、どっちが大事なんだっ!」

「…は?」

昼食後のまったりした時間を過ごす万事屋に、隊服の土方が駆け込んできて叫んだ。

「世間的には俺が忙しくて会えねーみたいに思われてるけど、てめーだって仕事は不定期だしずらせねーし俺も我慢してんだよ。なのにいっつも女がらみのトラブルに巻き込まれて、次々はべらしやがって…俺はてめーの都合のいいときだけ抱…」

「土方くんっ!子供らが聞いてるからっ!!」

慌てて土方の口をふさぐ銀時に、興味津々の神楽と呆れる新八。

「神楽ちゃん、何メモってんの」

「おままごとで使うアル」

最近の子供はドロドロな人間関係まで表現するおままごとをしてるらしい。

新八が白い目で銀時を見つめるので、必死に首を振る。

「銀さん…」

「いやいやいや、違うよ、誤解だよ?」

銀時の隣に正座し両手で顔を覆って泣きだした土方を見れば、どう考えても悪者は銀時だ。

「いたいた」

のんきな声の沖田がやってきて勝手に上がってくると、様子のおかしい土方は無視して刀を確認する。

「やっぱりでさぁ」

そう言ってお札の貼られた手袋で刀を取り上げると、土方は気を失って倒れた。それを銀時が抱き止める。

「沖田く〜ん。説明してくんね?」

沖田の説明によると、真選組が今日捕り物に入った屋敷の主人は刀のコレクターで、その部屋にいたはずの土方が急に姿を消した。うっかり手にした刀が妖刀だったようで呪われたんじゃないかと探してた、らしい。

「仕事仕事で家庭を省みないかと思いきや何人もの愛人を抱えていた夫に殺された、妻の怨念がこもっていたようで…」

それは土方が言っていた内容と同じで、あれは妖刀が言わせたことであって銀さんは土方くんを大事にしてるよ?、と言い訳しようとした銀時だったが、

「ほらね、誤解…」

「これにとりつかれると普段から抱えている不平不満が我慢できなくなるらしいんでさぁ」

「…普段から抱えてる…」

やっぱりあれは土方の本音のようだ。

「神楽ちゃん、今日はうちでご飯食べようか」

「マヨラーには不満がいっぱいネ」

「土方さんが何言ったんでぃ?」

神楽の書いたメモを沖田に渡して出て行く二人。

「…じゃ、土方さんは今日は非番ってことで、あとお願いしまさぁ」

メモを読んで事情を察した沖田も出ていく。

言い訳も思い付かずに取り残された銀時は、土方の身体を落ち着く形に抱き直して小さく溜め息をついた。

すると、気を失ってると思ってた土方の腕が銀時の服をぎゅっと握り締める。

気付いた銀時が頭を撫でながら言った。

「……そういうことは普段から言ってくんないと」

「…言えるか」

拗ねるように答えた土方の顔を見たくて銀時が身体を離そうとするが、そうはさせまいと強く抱き締める土方。それはそれで銀時を喜ばせるだけなのだが。

「後は?他にないの?」

「……」

「全部直したら俺とずっと一緒にいてくれるってんなら、銀さん超頑張っちゃうんですけど」

不満を直した銀時を想像してみた。会いたいときにいつも会えて、他人のトラブルを無視し、自分のだけに優しい銀時…。

「……全部直したらお前じゃなくなんだろーが……そのままのお前が一番……」

お互い不満はたくさんあって思い通りにならない相手に腹がたつけど、そんなヤツだからこそ好きになった。

大事なところを言えずに黙ってしまう土方が可愛くて、抱き締めていた腕を離す銀時。

もうちょっとあのままでいたいと思ってた土方が眉を寄せるので、申し訳なさそうな顔で白状する。

「直せるところは直したいってのは本当にだし、決してそんなことばっかり考えてるわけじゃないんですが、そろそろ離れないとヤバいかな〜なんて…局地的に…」

意味が分かって、しょうがねーなと言う顔をした土方が、離れた身体をもう一度抱き締める。

「直さなくていいっつっただろーが、ばーかっ」





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あの二人はホントにネタに尽きないよね。
お互いに、大事なものが他にある相手に惚れてることを悩んだりね。
土方がヤキモキしてるのも楽しい。



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