原作設定(補完)

□その3
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♯22

作成:2015/04/19
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人の気配がして目を覚ます。意識が覚醒するのに時間がかかったのは、その人に敵意がないのと、酒を飲んだせいだった。

が、自分の横に座っていたのが真選組の仲間ではなく、銀髪天然パーマのヤツだったことで一気に浮上した。

「万事屋…てめー、なんで屯所………じゃねえな」

「…俺んちですけど」

「?」

「もしかしてさっきのこと覚えてねーの?」

「なにがだよ」

「…だよねー、やっぱり」

「あ?」

「なんでもねーよ」

と言って立ち上がり部屋を出ていく銀時の声が素っ気なくて、なんだか土方も不機嫌になる。

覚えてないことで怒られても気分が悪いので、昨日の記憶を辿ってみた。

昨日は珍しく余計な仕事が発生しなかったし、近藤が出掛けずに屯所にいたからちょっと飲んでくるかと外に出た。

いきつけの飲み屋へ行ったら、親父のマヨ新メニューが旨くて酒が進み、ふらりと現れた万事屋にも苛立つことはなかった。

それどころか、隣で飲んで話をしていくうちに、けっこう面白い良いヤツだ、なんて思ったりして楽しかったことを思い出す。

そのあとからの記憶が曖昧だが、酔っぱらった俺をここまで運んで介抱してくれたんだろう。

それなのにさっきはいつもの喧嘩腰の口調になってしまい、銀時が不機嫌になるのも無理はない。

もう帰ったほうがいいなと立ち上がったが、黙って行くのも悪いかと物音がする台所を覗いた。

銀時はガス台の鍋の前にいて、土方に気付き言う。味噌汁の匂いがした。

「食ってけよ。二日酔いに効くんだろ」

「…言ったか?」

「ん」

「…じゃあ食う」

土方は二日酔いのときに味噌汁を飲むとすっきりする。それを聞いてわざわざ作ってくれたんだろう。残り物じゃない清んだ味で、けっこう旨かった。

「ごちそうさま」

「屯所まで送ろうか?」

「なんでだ」

「夜道の一人歩きは危険よ?土方くんはいろんな意味で」

「死ね」

銀時の新しい面を見たのも確かだが、憎たらしいのは変わらないようだ。

捨てぜりふを吐いて帰っていく土方。

万事屋前の柵で頬杖つき、その後ろ姿を見送って銀時は溜め息を付いた。

「ま、しゃーねーよな」




数日後、団子屋の前で銀時と顔を合わせた土方。今までならその時点でにらみ合いになるのだが、先日の醜態もあるためそれは回避した。

団子奢ってと言われ、世話になったしな、と思い買ってやる気になり、店先の椅子に並んで座った。嬉しそうに食べる銀時。

「そんなに好きか?」

と聞いてみたら、赤くなって慌てる。

「な、なに…が」

「団子」

「あ…ああ、うん…奢りだといつもの倍は旨いよな」

そう言った銀時の表情は、初めて見るものだったはずなのに、どこかで見たような気がした。

いつ、どこで?



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