原作設定(補完)

□その2
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♯20

作成:2015/04/18 修正:2016/03/28




「副長、お茶です」

屯所の食堂で、今日のお茶当番の山崎が土方の前にお茶を置く。

それを手に取り口に運ぼうとして、土方は掴んだ感触がいつもと違うことに気が付いた。

「ん? この湯呑み、俺のじゃねーだろーが」

「…あの、それが……」

「まさか……壊したのか、てめー」

お気に入りの湯呑みのために“ずごごごごっ”と効果音の入りそうな顔をして詰問する土方に、向かいに座っていた沖田が答える。

「俺が捨てやした」

「……総悟……」

「そいつぁ万事屋の旦那のお土産ですぜ。取り替えてくれって300円で頼まれやした」

万事屋は1週間ほど遠出の仕事で留守にしていた。それの土産だろう。

わざわざこんな手段で土産を押し付けなくても湯呑みぐらい受けとるのに、と思いながらそれを見る。

「……ちっ………ま、デザインはまぁまぁだな」

しぶしぶみたいな顔をしてお茶を飲むが、内心は嬉しい土方。しかし、

「ん?……でもなんかこれ小せぇな……」

手の中にすっぽり収まる湯呑みに、沖田に依頼までした銀時の企みに気が付いた。




「万事屋ぁぁああ!!」

万事屋に直接乗り込んできた土方は、しらんぷりでお茶を飲んでる銀時から湯呑みを取り上げた。同じデザインだったが、大きさが違う。

「やっぱり……夫婦湯呑みじゃねぇかっ!!!!」

「説明しよう、夫婦湯呑み(めおとゆのみ)とは同じデザインの大きいほうを旦那さんが、小さいほうを奥さんが、仲良し夫婦の証としてお揃いで使う湯呑みのことだ」

「説明はいらねぇぇ!」

銀時は土方が怒っていることを気にしてない様子でにや〜っと憎たらしい顔をして笑うから、よけいにムカついて持ってきた小さい湯呑みを頭上に掲げた。

「こんなもんっ……」

「いやぁぁああ!けっこう奮発したんだぞ、それっ!!」

さすがに慌てて土方の手首を掴んで止めてきたが、土方は無常にも手の平をぱっと広げたために湯呑みは落ちて…割れた。

「ああぁぁああ!!」

「あ〜あ、急に手を掴むから。残念だな〜」

「おまっ、酷っ、鬼〜っ」

「じゃあな」

騒ぐ銀時を無視してすっきりした顔で帰ろうとする土方に、新八が別の湯呑みを持ってくる。

「銀さんがすみません。これ僕が買ってきたやつですけど、変わりに持っていってください」

「………ああ、悪いな」

湯呑みを受け取った土方が帰ると、嵐の去った万事屋で新八はやれやれと息をつく。隣で銀時が感心していた。

「新八っ、ホント、お前はやればできる子だよっ」

土方に渡したのは、こんなことになるだろうと念のために用意していた湯呑みだったのだ。

お揃いで2つ買ったうちのもう1つを銀時に渡しながら、面倒のかかる大人たちに溜め息の漏れる新八だった。



おわり



これを書くときネットで夫婦湯呑みを検索したけど、柄違いがほとんどだった…
今は大きさ違いの夫婦湯呑みはないのか?
本当は“夫婦茶碗”のほうが語呂が良かったのですが、頭に浮かんでいたのは湯呑みだったのでそっちで書きました。



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