原作設定(補完)

□その2
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♯17

作成:2015/04/16 修正:2016/03/28




土方は副長室から出て、作成し終わった書類を山崎に渡しながら隊士たちの話し声がするのに気付いた。

今日は屯所内の大掃除があり、まだそれぞれが作業中のはずだろうと眉間にシワを作る。

「騒がしいな」

「あー、えっと……その」

「……なんだよ」

「今日は……バレンタインなんで」

なに浮かれてんだ、と怒られるかと山崎は思ったが、興味なさげにあっさりと返される。

「……ああ……気ィ抜くなって言っとけ」

「は、はいっ」

鬼の副長と呼ばれる土方でも、男所帯の真選組だけにこの程度の小さいお祭りぐらいは許してやろう、とたまには思うのだ。




この小さなお祭りは、近藤がお妙(店)から貰ったチ○ルチョコに小躍りして土方に自慢したところで終了した。

「さて、と。寝るか」

布団に入って目を瞑り、すっかり眠る体勢になってからふと気付いた。

『………そういや、アイツ何も言ってこなかったな』

銀色もふもふの憎たらしい笑顔が浮かぶ。

『ま、女子供のお祭りだもんな。アイツも興味ないんだろ』

数回静かに息をついてから、パチッと目を開けた。

『……………なわけねーよな』

『あの甘いもの好きがチョコを貰えるこの機を逃すはずねーよ』

『待ってる気がする。すげー待ってる気がする。ものっそ待ってる気がする』

『…………』

「ちっ」

起き上がって身支度を整えると屯所を出た。

途中の、

コンビニIN

コンビニOUT

で、受け取ったレジ袋をワシャワシャ鳴らしながら、ほんのり赤面しつつ渋い顔をする。

『質より量でいいよな。つーか、あんなチョコ、買えるわけねぇええ』

バレンタインはもうすぐ終わるのにまだカラフルなラッピングのチョコが並んでいても、カゴに普通のチョコをいろいろ突っ込んで逃げるように店を出るしかなかった。




万事屋を見上げるが、明かりは消えている。

『……寝てるかな……』

そう思いながら二階に上がって玄関扉に手をかけると抵抗なく動き、そっと開けてみた。

真っ暗な廊下、外の街灯でうっすら明るいその真ん中で、銀時が膝を抱えて座っていた。2月であるから、いつもの薄着では寒くて震えているようだ。

『ほらな!うぜー、こいつ』

予想以上に面倒くさい状況に、うんざりしながら中に入ると銀時の横に座る。

「おい」

「………なんだよ」

「ほら……バ、バレンタインの…チョコ」

買うのも渡すのもかなり恥ずかしいのを頑張ったのに、

「……いらね……もう過ぎたから、それただのチョコだし」

銀時はそう言って目を反らす。

時計は0時を過ぎていた。気付いて行動するのが少し遅かったようだ。

こうなったら簡単には気持ちを変えないだろうから、土方は仕方なく体を張ることにした。

「わかった。じゃあ、俺が食う」

「………お前甘いもん嫌いなんじゃ……」

「嫌いだよ」

そう言いながら、レジ袋からチョコを取り出し食べ始める。一口目から甘さで顔をしかめた。

『クソ甘ぇ』

「……無理すんなよ……」

次々に口に放り込むが、表情からかなり無理をしているのが分かる。なんでそんなことをするのか、土方は答えてくれた。

「捨てんのも勿体ねーし、お前のために買ったもん人にはやりたくねーし」

きっとついさっきまで自分のことは思い出さなかった薄情な土方と、思い出してわざわざ自分でチョコを買ってきてくれた可愛い土方。

どっちも銀時が大好きな土方なのだ。

土方に向き直り、すまなそうな顔でお願いする。

「………やっぱ、ちょうだい」

「無理すんなよ」

「欲しいです。お願いします」

「……そこまでいうなら仕方ねえからやる」

「ありがとう」

銀時が嬉しそうに笑うから、土方はチョコを取ろうと伸ばした手を止めてぎゅっと握りしめる。

「……食わせてやろうか」

「ん?」

『はい、あーん』的な、土方にしては可愛い仕草を想像したが、土方は食べかけのチョコを口にくわえ一口の大きさで割った。

そして銀時の顔を見てから、そのままチョコを銀時の口に入れ、押し込む。

チョコが溶けて無くなってから体を離し、真っ赤になって固まってる銀時をからかうように笑う土方。

「…もっと欲しいか?」

「……うん」

ハッピーバレンタイン。



おわり



はい、お約束〜(笑)
分かっていても、他の方が描いてるの見たら、口移しはやるでしょ!
だからパクリじゃないです(笑)



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