その他(補完)

□ホスト設定
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#2

作成:2015/10/26〜




俺の家にはホストの居候が住んでいる。





急な書類整理で午前様になったある日。

帰り道を疲れつつも早く帰りたいという気持ちで急ぐ土方に、なにやら言い争う声が聞えてきた。

進むごとに大きくなっていく声に、土方は迷惑そうに眉を寄せる。通り道で喧嘩をするのは止めて欲しい。

しかも怒鳴っているのは女の声で、怒鳴られているほうが男の声。聞えてくる内容からして男のほうが浮気したとかなんとかの痴話喧嘩だ。

現場を避けようとしたら遠回りになるし、痴話喧嘩なら巻き込まれることもないだろうからさっさと通り過ぎてしまおう、と現場の通りに足を踏み込んだとき、

「もういい!!二度と帰ってくんな、この腐れ天パーぁぁぁああ!!」

「ちょっ、天パ関係な……うぎゃぁぁぁあああ!!」

という叫び声とともに、ガラガラと何かが崩れる音。

自然とそちらに目を向けると、怒った足取りで立ち去る和服姿の女と、ゴミ捨て場に埋もれてひっくり返っている男の姿が見えた。

『あ〜あ』

会社の先輩は“女が強いほうが上手くいくもんだ”と言っているが、強すぎるのも問題じゃないだろうか。

喧嘩が終わった隙に通ってしまおうかと思ったが、ピクリとも動かない男に、そのまま放置していくのはさすがに気が引けた。

「……おい? 大丈夫か、あんた……」

声をかけながらゴミに埋もれた男を覗き込むと、金髪パーマでチャラいスーツを着たとても堅気な仕事についてなさそうな姿をしている。

深入りせずに逃げたほうが良かったのかもしれないが、目を開けた男は土方の顔を見てふにゃっと笑った。

「……大丈夫ですぅ……」

「…ならいいけど……早く帰って着替えねーと服ダメになんぞ……」

ついつい余計な口出ししてしまうのも自分の悪い癖だとは分かっているが、目の前の情けない顔をした男がチャラいけど悪い奴に見えなかったせいかもしれない。

男は土方の優しい言葉に逆に落ち込んでしまった。

「……帰ってくんなって言われたから……帰るところない……」

そう言えば立ち去った女にそう怒鳴られていたし、一緒に暮らしていたところを追い出されたのだろう。

ダメだ、悪い癖を発揮している場合じゃない、と分かっていても、激しくしょんぼりしているその姿についつい土方は言ってしまった。

「……うち、くるか?着替えぐらいなら貸してやるけど……」

「まじでか」

嬉しそうな顔でもぞもぞとゴミから立ち上がろうとしている男に手も貸してやる。

背格好も歳も同じぐらいだろうか。汚れも匂いにも染み付いてしまっているがスーツのゴミを払い、男は土方を見てもう一度笑った。

「サンキュ。俺、坂田金時。職業ホストでぇす」

ああ見た目通りのチャラい性格と仕事だったと思いながら、金時が土方からの返事を待っているようだったので答えてやる。

「…土方十四郎……普通の会社員……」

「よろしく、土方くんっ」

変な出会いかたをした変な男を家に連れ帰るハメになってしまった土方だたったが、自業自得なので文句は言えない。


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