学園設定(補完)

□逆3Z−その2
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#8

作成:2015/10/05




坂田銀時は落ち込んでいた。

今日は金曜日の6時間目。休み前の一番楽しい時間のはずなのに、今朝からどんどん落ち込みは増していくばかり。

「はぁぁぁ」

深い溜め息を付きながらゴスッと額を机にぶつけみたら、思ったよりも痛くてよけい切なくなったり。

『もう時間ねーぞ、気合入れろ、俺ぇぇええ!!』

明日10月10日は銀時の誕生日だ。

それをダシに飲みに行こう(未成年)とか合コン行こうとか言う友人の誘いを断ったのは、一緒に過ごしたい人がいるから。

友人に「ぶははははっ、どこの乙女だてめー」と笑われても譲れない。

『部屋で二人きり、ケーキ食ってご飯食って、お酒なんかもちょっと飲んだりして、ちゅーとかぎゅーとか………そして、初めてのお泊りで………うきゃぁぁぁあああ(ハート)』

机に額を付けたまま妄想して真っ赤になりながらジタバタと悶えているが、現実はそう甘くはなかった。

その一緒に過ごしたい相手をまだ誘ってもいないのだから。

普通にさらっと「土曜日誕生日なんだ。お祝いしてくんない?」と言ってしまえばいいのに、なかなか言い出せずに一週間が経過してしまった。

そもそもなぜ言い出せないかというと、関係がいまいち微妙だから。

銀時は大好きで大好きで大好き…(中略)…なのでそれは伝えてあるし、押したり引いたり唆したりしてキスも何回かしたのだが、

『…まだ好きの一言も聞いてないんだよねぇぇ…』

そんな微妙な関係。

本日数十回目の溜め息を付いたとき授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。

『もうHRの後に声をかけるしかさらっと言うチャンスはねーぞ!』

と、決断と気合を入れてみれば、体育教師の近藤がひょこっと顔を出し、

「土方先生は手ぇ離せないんで今日はこれで終わり。連休だからってハメ外すなよ〜」

そう言われて最後のチャンスは瞬く間に消えた。

休みだとはしゃぐクラスメイト達の中、気の抜けた銀時の机に友人たちが集まってくる。

「その様子じゃあ結局誘えなかったようだなぁ」

「イザというときに決断力がない、貴様の悪い癖だな」

「お?もう誘わんがか?まだまだ時間はあるぜよ」

「コイツはなぁ、さりげな〜く誘うのが夢だったんだよ」

「土方(大人)相手にカッコつけたい、貴様の悪い癖だな」

「がっはっはっはっ、金時ぃ、男はカッコ悪くなれてなんぼぜよ」

「うるせぇぇえええ!!ほっとけコノヤロォォオオ!」

周りで好き勝手に騒がれてキレる銀時を、

「ほっとかねーよ」

「寂しい貴様を俺たちが誘いにきてやったんだ、ありがたく思え」

「予定通り合コンば行くぜよ」

「ちょ、それ、お前らが行きたいだけだろうがぁぁ!!」

優しい友人たちが首根っこをつかんで連れ出してくれた。



三階の教室から校庭まで移動するうちに抵抗する気を失くした銀時が、ずるずる引きずられていく姿を数学教化室の窓から見ていた土方が小さく息を付く。



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