学園設定(補完)

□逆3Z−その1
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#2  2015/04/25


職員室の自分の席に戻った土方は白い包みが置かれているのに気付いた。

手に取ってみるとキッチンペーパーに包まれたお菓子のようだった。

今日は自分の担当するクラスで家庭科の調理実習があったはずだから、誰かが土方に持ってきてくれたのかもしれない。

だが、土方は甘いもの、とくに菓子は苦手だったので、申し訳ないけれど他の先生に食べてもらおうかと思ったとき、ふわんと良い匂いがした。

開けてみると中にはシュークリームが入っていて、皮は甘くないし大丈夫かな、と匂いにつられて食べてみる。

本来甘いクリームが入っているはずの中には、マヨネーズが入っていた。

土方は病的なほどのマヨネーズ好きだった。もちろん本人はおかしいと思っていないのだが、友人知人から嫌がられるので、学校、とくに生徒のいる前でマヨラーぶりを発揮したことはない。

何で、誰が、マヨラーだってことを知っているんだろう。

疑問に思ったが、教室へ行って「先生の机にシューマヨを置いた人」とは聞けなかった。



翌週、きっちり密封したタッパーの中に、マヨ肉じゃがが置かれていた。

さらに翌週にはマヨコロッケ。マヨ5割、ジャガ5割の絶品だった。

味も美味いし正直嬉しくもあるのだが、職員室に残っていた他の教師に聞いても誰も来てないと言われ、土方の他クラスでの授業が終わってから急いでもすでに置かれているので、未だに正体が分からない。

観念してクラスで聞くしかないかと教室へ向かう途中、開いた窓から外にいる女生徒の声が聞こえてきた。日当たりがいいので生徒が壁際で休憩しているのだろう。

「また今日のコロッケも真っ黒になっちゃったわ」

「…調理実習なんて面倒くさい授業はみんな新八にやらせておけばいいと思うアル」

「そうねぇ、食べるだけのほうが楽よね。神楽ちゃんの班は銀さんがいるからいいわね」

「でも最近銀ちゃんおかしくなったアル」

「そうなの?おいしそうに見えたけど…」

「なんか自分の分にごっさマヨネーズ使ってたアル。見てるだけで口が酸っぱくなるネ」

「まぁ。砂糖バカの上にマヨラーになってしまったのかしら」

「だから調理室をこっそり抜け出して一人で食ってるアル」

土方は教室に向かっていた足をくるりと返した。



翌週。

窓際にある土方の机に、窓の外からそっと手が伸びてきた。

その腕を中からガシッと掴んでやると、「ぎゃ……」と叫び出しそうになるのを慌てて口を塞いで止める人間がいた。

覗くとクラスの坂田銀時が隠れていて、土方の姿を見ると眉を寄せる。

「な、何やってんだよ、先生。サボりか?」

「他の先生に授業を入れ替えてくれと頼まれたから、今は空き時間だ」

銀時は拗ねたようにそっぽを向いていたが顔が真っ赤だ。

この生徒は、入学当初から何かと土方にまとわりつき何度も不愉快な思いをさせられたが、それが“好きな子をいじめる小学生の心理”なのだと土方が気付いた途端、疎遠になっていた奴だ。

諦めたのかな、と思っていたが別な手段でアプローチすることにしたらしい。

土方がマヨラーだと知ったのも、大方、生徒のいないところでこっそり弁当を土方スペシャルにしていたのを盗み見たのだろう。

「サボりはお前のほうだろう。さっさと調理室に戻れ」

土方はそう言って背中を向ける。

差し入れしていたのが自分だとバレたのに何も言わない土方に、銀時が表情を曇らせたとき、

「それから、危ないから授業が終わってからちゃんと入り口から入ってこい」

そう付け加えた。

職員室のベランダに授業中の生徒が立ち入るためには、けっこう危険なルートを通らなくてはならないことを知っていたからだ。

つまり、また持ってきていい、と言ったのだと理解した銀時が嬉しそう笑った。





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銀さん料理上手、から出た妄想。
男子も家庭科のある学校、で一つよろしく。
生徒×先生には書きたいネタがあるんだけど…
長いし…原作設定ほど萌えないし…
悩み中です。


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