学園設定(補完)

□3Z−その1
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#1  2015/04/25


act.1


今日は一日廊下で耳障りな声が聞こえていた。

「銀八〜〜っ、チョコ上げる〜〜」

「もうちょっと可愛く言えねーのかぁ?」

「相手に合わせてるんですぅ」

そう言って笑う女生徒、ぶちぶち言いながらでも甘いものが貰えるのが嬉しい銀八。

今日はバレンタイン。女も男も浮かれる今日、登校してきてから機嫌の悪い男子生徒が一人いた。

『喜んでんじゃねー、バーカっ』



放課後、国語科準備室で本日の成果を並べて銀八はご満悦だった。

真面目な教師とはお世辞でも言えない銀八だったが、生徒からの人気は高く、おかげでバレンタイン以降はしばらく甘いものに困らない。

100%義理チョコの既製品だったが、どんなものでもチョコは嬉しい。

鼻歌を口ずさみながら包装紙を開けていたので、背後にある廊下をものすごいスピードで走ってくる足音に気付かなかった。

ドアがバーンと開いて、なんだ、と思ったときには後頭部に鈍い衝撃。

そのまままたドアがバーンと閉まって、走り去っていく足音。

「いったぁぁっ…なんだ、今の…」

振り返り、おそらく床に落ちたものを見ると、普通の板チョコが転がっていた。

手を伸ばしたとき、ドアの隙間から遠くのほうで発せられた声が小さく聞こえてくる。

「おい、土方っ、廊下走るなっ」

チョコを手に取ると、かろうじてバレンタインの文字が印刷されたシールが貼られた、コンビニで売ってそうなもの。

それでも、どんな顔でこれを買ったんだろうと思うと、笑えてしまう銀八だった。




一ヶ月後。

「銀八〜〜っ、チョコのお返しは〜〜?」

「安い好意に見返りを求めちゃいけませんよ」

「ドケチっ!!」

そんな会話を背後に聞きながら廊下を歩いていた土方は、その声が自分を呼ぶのに気付いた。

「土方、落としたぞ」

と小さい紙袋が差し出されるが、見覚えはない。

「あ?俺んじゃない…」

「いや、お前のだね。先生ちゃんと見てましたっ」

そう言って紙袋を押し付けて立ち去る銀八。

先生の目は節穴だからな、と思いながら、中身を確かめるために袋を開けてみた。チラッと覗いてすぐに袋の口を閉じる。

「トシ〜?」

「と、トイレ行ってくる!!」

近藤に呼ばれたがそう言ってトイレの個室に駆け込んだ。

そっと取り出した紙袋の中身は、以前銀八に見つかったことがある土方が吸っている銘柄の煙草で、未開封のビニールには赤いマジックでハートが書かれていた。

『生徒にこんなもんよこすか?バーカっ』

一ヶ月前と違って、楽しい一日になった。





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メモ的にも初めての3Z。
学生時代が遠い昔なので、変なところはスルーで。
どうも先生攻は苦手です。シチュ的に萌えなくて。
読書傾向から、銀八って銀さんほどふざけてないし…



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