原作設定(補完)
□その19
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#181
作成:2016/02/19
土方はご機嫌斜めだった。
5日間ほどまもとに“食う暇”も“寝る暇”もなく忙しく働いて、それがようやく片付いた今日、やっと休めると思った途端に沖田がやらかしてくれた。
ものすごい爆発音に駆けつけてみると、風呂場が木っ端微塵になっていたのだ。
「“G”を見つけたので退治しただけでさぁ」
ゴキ相手にバズーカを連射、風呂場は再起不能。
当然風呂にも入れていなかった土方は、ゆっくり浸かって暖まったところで眠りにつきたかったのに、と項垂れた。
というわけで、むっつりとした顔で銭湯にやって来た土方。
納税者の方々が目を合わせないように避ける中、のん気な声を掛けてくるヤツがいた。
「多串くんじゃん」
「…万事屋…」
風呂上りホカホカの銀時が立っていた。その姿を見た途端、疲れきった身体が高揚していくのが分かる。
「珍しいな、風呂でも壊れたのか?」
「あ、ああ……総悟がなバズーカで……」
「相変わらず物騒だな、お前んとこ」
ドギマギしているのは銀時が半裸のせいだからだけじゃなかった。半裸どころか全裸の男の身体なんて見慣れている。
相手が銀時だから。このだらしない顔とだらしない生活とだらしない性格をした男を好きだと気付いてから早数ヶ月。
会えば喧嘩ばかりだったのが、ようやく普通に会話したり酒を飲んだりできるようになった。
土方に下心があることを知らないで仲良くしてくれる銀時に多少心が痛みつつ、一緒にいれることが嬉しかった。
そんな銀時に、こんな場所で不意打ちに出会ってしまい嬉しさと逃げたさが入り交じる。
「つーか、久し振りじゃね?」
「…い、忙しかったからな…」
「今は?もう忙しいの終わったのか?」
「ま、まあな」
「んじゃ、飲み行かね?待ってるからよ」
「え……わ、分かった」
了承してそそくさと浴場に入った土方は、思いがけず銀時に会えてしかも飲み行けることになり疲れも怒りも吹っ飛んだ。
しかし急いで身体を洗い、湯に浸かったあと気が付いた。
『ま、待ってるって言ったか?……てことは、あいつの前に、は、裸で戻らなきゃいけねーってことじゃねーかっ!』
銭湯なのだから当然だし入るときにもお互い半裸を見ているのだから今更だったが、意識してしまうと止まらない。
出たら裸を見られる、出ないと銀時を待たせる。
そんなことをぐるぐるぐるぐる考えていたら………長く風呂に浸かりすぎて気を失ってしまった。
意識を取り戻したとき、頬に冷たい風とふわっとしたこそばゆいモノが当たっていた。
それが銀色の髪だと気付いて身体を強張らせる。
「目ぇ覚ましましたかぁ?」
「よ、万事屋っ?」
銀時に背負われて夜道を歩いている理由を、ぼんやりした頭で考えようとしたが銀時が先に教えてくれた。
「お前、銭湯でのぼせたんだよ。お疲れだからって寝ちゃだめだろーが」
笑いながらそう言われ、のぼせた本当の理由も思い出した。
「わ、悪い」
慌てて降りようとする土方に、銀時はおぶる腕を緩めず言ってやる。
「まだ無理すんなって。屯所まで送ってやりますよ」
「だ、だけど……お、重いだろーが…」
「ぶはっ。女子中学生みたいなこと言うなよ。こんぐらい平気ですぅ」
そんな風に言われたら一人で意識してしまっているのが恥ずかしくなってしまう。
大人しくなった土方を「よいしょ」と」背負い直して歩く銀時の背中が温かい。
土方は身体をぴったりとくっつけて目を瞑った。
仲良くなって一緒に居られるようになったことは嬉しいけれど、この気持ちが通じることはない。
そう思うと暖かい背中が嬉しくて、泣けてきそうだった。
自分の背中にぴったりと身体をくっつけて黙ってしまった土方に、
『いろいろぐるぐる考えてんだろーなぁ。多串くんから告らせようと思ってずっと黙ってきたけど、そろそろ限界なんですけどぉ』
片想いの切なさに耽る土方を余所に、両想いの嬉しさにウキウキする銀時だった。
おわり
もっとじっくり書きたいんですが……時間がなくてざっくりになってしまいました。
某少女マンガのあるシーンからの妄想です。
たまには余裕のある銀さんもいいよね。うちのは基本ヘタレなので(笑)