原作設定(補完)

□その17
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#161

作成:2015/12/14




「初めての接吻の相手と一ヶ月以内に結ばれないと、とんでもない不幸が押し寄せる!」


かぶき町の路上で占いをしている老婆にそう言われ、土方は眉間にシワを寄せ、沖田は興味津々に目を輝かせた。

“当たると評判の占い師”を見廻りの途中で発見した沖田が、そういうものを信じないため白ける土方を引っ張って行き、

「コイツをみてくだせぇ」

「俺かよっ!!」

なんてやりとりの後、老婆が出した結果がアレだ。

「……はあ?何言ってんだばあさ……」

「そいつぁ大変だ土方さんっ!で?初めての接吻の相手って誰なんですかぃ!?」

「おもしろがるんじゃねぇっ!当たるわけねーだろーが」

「信じるも信じないもおまえさんの自由だけどねぇ」

老婆がにやりと笑うので、不機嫌な顔で立ち去ろうとした土方は、
「お客さん、料金」

「土方さん、料金」

「俺が払うのかよっ!!」

今でも十分不幸だと思わずにはいられなかった。




「ぶふふ、そりゃ災難だったなぁ」

イチャイチャした後のピロートークでそんな話を聞いた銀時は、布団に転がったまま可笑しそうに笑っている。

煙草を吸いながら“思い出し不機嫌”になる土方に、嬉しそうに聞いた。

「で?不幸は回避できそう?…つーか、初ちゅーっていつ?誰?」

沖田と同じような顔でグイグイ食い込んでくる銀時に、土方は鬱陶しいとばかりに顔面に手を当てぐーっと押し返した。

回避するためには初キスの相手と結ばれなくてはならないのに、付き合ってるいる相手にそんなことを言われると面白くない。

もちろん、土方が面白くないと思っていると分かっていて銀時は聞いたのだから、思ったとおりの反応に銀時は楽しそうだ。

「当たるわけねーんだから、んなことどうでもいいんだよ」

「女子が聞いたらときめいちゃうような話だけどな、おっさんには笑い話だな」

言いながら土方の腰にぎゅーっと抱きつき、甘えるように擦り寄ってくる頭をもふもふっと撫でてやる。

銀時が笑い話にしてくれるなら土方も特に気にしないことにした。


……のに、周りが放っておいてくれなかった。

「トシぃぃ、あの婆さんな!当たるって超有名らしいぞっ!お妙さんがそう言ってたんだから間違いないって!」

「副長〜、あの人は本物ですよっ。初キスの相手を探したほうがいいですって」

「悪いこたぁ言わねーから、信じたほうが……」

「死ね土方ぁ」

毎日毎日“耳たこ”なぐらい隊士たちにそう言われ、

『やっぱり今でも十分不幸じゃねーかっ!!それと、死ね沖田!』

土方はずっと不機嫌MAXだったが、宣告された一ヶ月が近付くとMAXを超え、だんだん不安になってきた。

『なにこれ、洗脳!?……んなこと言われても、初めての相手って……』

そんな風にグラグラしはじめた土方を察してか、銀時がまめに姿を見せるようになった。

休憩時間に2人で、団子やパフェやたい焼きを食べ……る銀時と一緒にいるだけだったが、嬉しそうに笑っている姿を見てるだけで気持ちが落ち着いていく。

そして気持ちの晴れた土方が屯所に戻ると、また近藤たちにあれこれ言われ不安になる、の繰り返し。

だがそんな日々もあっという間に過ぎ、あれから2ヶ月。

「土方さん、今日はなにかとんでもないことがありやしたか?」

「お前に命を狙われてること以外はとくにねーよ」

「チッ」

ごっさ残念そうに舌打ちする沖田を睨みつけるが、あっという間にぴゅーと逃げられてしまう。

だが沖田の期待を裏切る結果になったことにご機嫌な土方は許してやるのだった。


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