原作設定(補完)

□その9
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♯81

作成:2015/06/19
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いつもの待ち合わせの場所。

約束の時間から遅れること5時間。何故か怒っているのは待たせた土方のほうだった。

「いつまで待つつもりだよ」

「多串くんが来るまで」

「…来なかったらどうすんだ」

「来たじゃん」

そう言って銀時は笑ってみせたが、わざと遅れてきた土方がどういうつもりなのかは予想が付いた。

土方は見廻り組との小競り合いで負った怪我で入院し、退院してきたばかり。

その間、お見舞いに行っても会ってもらえず、今日の約束だって山崎に伝言を頼んで一方的に押し付けたものだ。

言わずに済ませたかった言葉を伝えるために土方はここに来たのだろう。

「もう会わないほうがいい。お前といることで真選組に迷惑がかかったら、俺は……」

銀時が攘夷戦争時代に名を馳せた志士“白夜叉”である事実は、時間とともに土方の中で重いものになっていた。

得体の知れない奴だとは分かっていたのにどんどん惹かれていって、銀時の口車に乗ったフリで付き合うようになった。

“会わない”と口にするのがこんなに辛くなるぐらい好きなのに、真選組副長である自分を捨てることはできない。

真選組副長と攘夷志士の間に深い係わりがあるのを追求されたら……そう思うと笑うこともできなくなった。

そんな土方の苦しみは見てれば分かるのに、銀時は呆れたように笑い飛ばす。

「ぷはっ!真面目だなぁ、多串くんは。そうなったらそん時考えればいいじゃん」

それはいくらなんでも楽天的すぎるんじゃないだろうか。銀時らしい…らしすぎる言葉に、土方は眉を寄せた。

しかも正論であったりするからよけいにイラつく。仕方がない、ネガティブなことを更にくよくよ考えるのがA型なのだから。

「今の世の中さ、いつどうなるかなんて分かりゃしねーだろ。

お前なんて特に、テロ対策特務警察じゃん。夜中に電話で呼び出されるお前を心配しねーとでも?

いっそのこと真選組に入ったろーかと思ったのだって一度や二度じゃないんですぅ」

真選組からの呼び出しにいつも怒っていた銀時が、実はそんなことを考えていたということに胸が熱くなる。

嬉しい顔をしてしまうのは悔しいので、

「……入るか?」

「無理っ。多串くんの局中御法度じゃ三日で切腹だよ」

勧誘してみたが、速攻で断られた。確かに銀時では切腹が日課になってしまいそうだ。

思わず笑ってしまった土方に、銀時は何か考えるような素振りをしてから立ち上がる。

「よしっ、んじゃ、行くか!」

「?どこに……」

銀時は答えず、戸惑う土方の手を引っ張ってズンズン歩いて行く。

見慣れた風景に行先の予想はついたが、銀時がどういうつもりなのか計り知れないまま、真選組屯所に到着。

「ちょ…万事屋っ?」

「ゴリ……局長は?」

門当番の隊士に銀時が問いかけると、土方が一緒だったせいか会議室だとあっさり教えてしまい、

「お前っ、何教えてんだっ。あとで切腹…」

土方が怒ってそう言ったが、言い切る前に銀時が引っ張って行ってしまったので、“切腹”まで隊士には届かずに済んだ。


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