原作設定(補完)
□その6
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#51
作成:2015/05/11
玄関がガタガタと開いてなだれ込むように誰かが入ってくる音がした。
新八が顔を出すと、銀時と長谷川が床に倒れこんでいて慌てて駆け寄る。
「大丈夫ですかっ」
「もう〜、ちゃんと歩いてよ、銀さん」
どうやら酔っ払った銀時を連れて帰ってきた長谷川が、玄関に着いたとたんに崩れ落ちた銀時に巻き込まれたようだ。
「うわっ、まだそんなに酔っ払ってるんですか?もう9時ですよ」
「あははは。なんか銀さん止まんなくてさ」
昨夜から飲みに出かけて今朝まで飲んでいたらしい。床に転がったまま銀時は高いびきをかいている。
最近はこんなになるまで飲むなんてなかったのになぁと、銀時を見ながら新八が思っていると、長谷川が思い出したように言った。
「そういや、多串くん?って知ってる?」
「多串くん?……いいえ」
「多串くんに会いたいって1万回ぐらい言ってたよ〜。昔の友達かなんかかな」
それだけ言って長谷川は帰って行った。
神楽がないので、新八は銀時の両腕を掴んでずるずる引っ張りながら部屋まで運び、布団に寝かせる。
「……あれ?でもどっかで聞いたことがあるような…」
+
「どうしたんですか、その怪我」
「斬られたんだよ」
「棟梁に?」
「何でだよっ」
「サボってのこぎりでやられたのかと…」
「ちげーよ、多串くんにやられた」
「多串くん?」
「あいつ……あー……真選組?あそこの瞳孔開いたやつ」
+
以前、集英建設の依頼に出かけたはずの銀時が肩を怪我して帰ってきたとき、そう言ってたことを思い出す。
『土方さんのことだよね……多串くんに会いたい?いつのまにか仲良くなったのかな?』
そういえば、あれからしばらく銀時は土方への文句ばかり言っていた。
真選組と顔を合わせることが多くなり、そのたびに土方とぶつかっていて、性格的に合わないんだろうなと思った。
“無視すればいいのに”
“…してーんだけど何か目につくんだよな”
そんなことを言っていたあとから、あまり土方のことを口にしなくなった気がする。
『気にするのをやめたのかと思ったけど、もしかして、気が合っちゃったりしたのかな』
だとしたら、それはそれで新八たちに話してくれると思うのだが、それすらも聞いたことがない。
『……ひょっとして……』
だらしない顔で寝ている銀時を見ながら、新八はちょっとした邪推が湧いてしまった。
神楽が帰ってきたし、今日はもう仕事もないようなので帰宅する途中で、新八は土方に会った。
向こうも気付いたのでとりあえず挨拶をする。
「こんにちは、土方さん」
「おう」
見廻りをしている土方を久し振りに見かけた。時間が空いて1人で出てきたのだろうか。
新八が何か言おうとする前に、土方のほうから話しかけてきた。
「この時間にぷらぷらしてるなんて暇なんだな」
むかし銀時がよく土方の文句を言っていたときに、そんなことを言われたという話を聞いた。
土方はそんな言い方しかできないんだろう。
しかし、素直じゃない大人に囲まれている新八は、すぐに別のことを思いつく。
『もしかして、僕が暇=銀さんが暇、を確認したのかな?銀さんに会えないかと思って見廻りに出たのかな?』
なので言ってやった。
「銀さんが酔っ払って仕事にならなかったんで帰ってきたんです」
「……二日酔いか?暇な奴はいいな」
「それが、何か悩み事があるみたいで……毎晩毎晩あんなに飲んで……身体を壊さないか心配です」
本当は今日だけの話だが、大袈裟に心配そうに言ってみた。
「神楽ちゃんも呆れて僕んところにずっと来てるんで、銀さんまた飲みに行っちゃうかもしれません」
土方の表情が曇ったことに気付いた新八は、返して神楽を連れて帰った。
『これで銀さんも少しは元気になるかなぁ』
辺りが暗くなりかぶき町が賑わい始めた時間に、万事屋に静かに現れた来訪者。
二日酔いで痛む頭を枕に押し付けたまま、銀時は顔も上げずに言った。
「おれはお前のなんなんだよ」
真選組が忙しいのも、時間が合わなくて会いにくいのも分かっているが、まったく音沙汰なしで一ヶ月も放置されるとさすがに愚痴も言いたくなる。
そして土方も、さすがに悪かったなと思うので、銀時の傍らに正座して答えた。
「……こ……ここ」
『こ?』
「……恋人だと思ってるよ」
「………」
ガバッと起き上がって土方を見ると、顔が真っ赤だ。
銀時の機嫌を取るためとか、適当に言った言葉じゃないと分かって、銀時は一ヶ月分を埋めるように抱き締めた。
土方もそっと抱き締め返してくれたので、
「…こ…ここ」
『こ?』
「こんなことでチャラにできると思うなコノヤローっ」
そう叫びながら超嬉しい銀時だった。
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短いネタを選んだので…特に何もないな(笑)
銀さんはいろいろ我慢してるんだよ、あれでも。
…土方も我慢してるけどね。
萌えるカプだよ、ほんと。