原作設定(補完)
□その4
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#40
作成:2015/05/01
5月5日。
迷惑な来訪者で目を覚ました土方。というか、一歩間違えば目が覚めなかったかもしれない。
間一髪で回避した土方は、バズーカを片手に立っている沖田を殴りつけた。
「誕生日おめでとうございやす」
怒られたのを全く気にせず、沖田は土方の前にケーキを差し出した。
一見普通のケーキだ。
「……」
「やだな、毒なんて入ってませんぜ」
「バズーカは撃ち込もうとしたけどな」
「祝砲のかわりでさぁ。細かいことは気にせず、一口ぐらい食ってくだせぇ」
問答無用で怪しかったが、さすがに毒殺なんておもしろくない殺し方はしないだろう、と思って一口食べた。
「旨いですかぃ、幽体離脱ケーキ」
「まあま……ああ!?」
「食べると幽体離脱できるケーキでさぁ」
そんなふざけたものがあるか、と言いたかったが、沖田なら用意できるかもしれない。
「食べた場所によって好きな場所に行けるそうですぜ。土方さんが食ったのはハートなんで……好きな人の所へ行けまさぁ」
「お前っ…」
立ち上がろうとして視界がぐらりと揺らぎ、そのまま真っ暗になった。
目が覚めたらそこは万事屋のリビングだった。
銀時は机に足をかけて椅子に座り、新八と神楽の姿はない。
どうしてここにいるのか、と同時に、沖田に言われた幽体離脱ケーキを思い出す。本物なのか?
土方には自分が見えているので迷っていると、定春が土方に向かって唸り出した。
「うるせーぞ、定春。めっ」
銀時は顔を上げて定春を叱るが、土方には気付かなかった。
やっぱり見えていないのかもしれない。
夢なのか、本当に幽体離脱してるのか、まだ自信はなかったが、定春を『動物は勘がいいんだな』と撫で撫でしたら唸るのを止めた。
とりあえず銀時には見えてないようなので、ソファに座り銀時を監察。
椅子に座り鼻くそをほじりながら暇そうにジャンプを読んでいる。
だらしなくて、下品で、労働意欲がなくて、マダオで……と不満をいろいろ並べてみるが、ケーキの効果が正しいなら銀時のことが好きらしい。
うすうす気付いてはいた。会えば喧嘩ばかりしているのに、会いたくて姿を探すようになっていた自分に。
ふと気が付くと、ジャンプを読んでる銀時の手が全然動いていない。なんだか落ち着かない様子だ。
意を決して受話器を取り番号を回すが、相手が出なかったようで受話器を戻す。カレンダーをちらりと見た。
しばらくしてからまた電話、やっぱり出ない。
「……おかしーな……居るはずだって言ってたのに……」
その様子に、土方はある事が気になりだした。
銀時が自分の誕生日を知ってるのか、電話は自分に掛けたのか。
ソファから立ち上がって近くへ行こうとしたとき、また目の前が真っ暗になった。
再び目が覚めるとそこは副長室で、目の前に近藤としょんぼりとした沖田が座っていた。
「大丈夫か、トシ」
どうやら土方が昏倒しているので、近藤に沖田のいたずらがバレて怒られたらしい。
「こんな怪しい物食わすなんて、さすがに酷いぞ。今回はみっちり説教してや……トシ?」
めずらしく近藤が怒っていて沖田をしっかり叱ってくれる気になっているようだが、土方はそれどころじゃなかった。
携帯を確認すると、そこには万事屋からの着信があった。
「悪い、近藤さん。俺、今日は非番だから出てくるっ」
「え?トシ?」
部屋を飛び出した土方に、沖田は助かったとにやけるのでまた近藤に怒られた。
万事屋へ急ぎ足で向かう途中で、前方から歩いてくる銀時に会った。
お互い、電話に出ないので探しにきたのかな、着信があったから気にしてくれたのかな、と思いながら黙ってしまう。
このままじっとしてるのも耐えられなくて、土方が聞いた。
「……お前、今日暇か?」
銀時は一瞬嬉しそうに笑ってしまい、慌てて顔を戻し答える。
「忙しいけどお前がどうしてもって言うなら遊んでやらなくもねーよ、忙しいけど」
「……暇だから電話してきたんじゃねーのか」
「電話?あれ?間違ってお前に掛けてた?」
白々しいごまかしも事実を知っているから笑って許してやる土方だった。
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土誕記念週間の誕生日ネタ。
なんで幽体離脱だったのか(笑)
なんとなく思い付いたキーワードから、もやもや考えた話だろうなぁ。