原作設定(補完)

□その4
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♯31

作成:2015/04/24




真選組の局長と副長が揃って城へ出向いた帰り、近藤が寄り道したいと言う。

「有名な洋菓子屋みたいなんだけどさ」

「女ばっかりじゃねーのか」

「だからトシも着いてきてくれよ、勲のお願いっ」

仕方ねーなと立ち寄った店は確かに近藤では気後れするくらいかわいらしい外観だったが、中に入ってみると一転、男だらけだった。

今年はホワイトデーにここのお菓子を贈るのが流行っているらしい。

「8個入りを20箱」

ようやく回ってきた順番に近藤がそう注文するので、土方は驚いて聞いたが近藤がしゅんとした顔をする。

「そんなに貰ったのか?」

「…お妙さんにスマイルのみんなの分が欲しいって言われてさー」

この様子ではお店が用意したおざなりなチョコしか貰えてなさそうなのに、頼まれて買いに来た近藤も近藤だと思う。

『明日はホワイトデーか』

近藤の分が用意されるのを待ってる間に、買ってやったら万事屋も喜ぶかな、と思ってしまった。

バレンタインに、土方から貰えないのは分かっていたのか、銀時からチョコを持ってきた。

甘いものは苦手だと言ったら、「じゃあ、それ頂戴」と取り返し、「土方からチョコ貰っちゃった」と言い出す。そんなんでいいのか?と思ったが、嬉しそうだったので黙っていた。

「12個入りを1つ」

「あれ、トシは今年受け取ったのか?」

いつも断っているトシが珍しいなという顔をされたが、あれも貰ったことになるんだろう。

包装なしで1つ買い、ホワイトデー当日になんて恥ずかしくて無理なので、今日このまま届けに行くことにした。



かぶき町で車を降りたが、万事屋までの道が長く感じる。やっぱりやめて帰ろうかと何度も思った。

頑張って平静を装い訪ねると、

「あれ?忘れもん?」

そう言われた。そう、昨夜はここにいて今朝早くに屯所に帰ったばかりだったのだ。

「菓子貰ったんだけど食わないし、やる」

隊服の土方に、訪問先で貰ったのかな、と別段変なことだと思わずに銀時は喜ぶ。

「まじでか。今日は甘いもん食ってなくてさ〜♪」

土方にお茶を出すと、さっそく箱を開けて食べ始める。

「あ、なんだこれ、すげー旨い」

思ったとおりの嬉しそうな顔に、やっぱり買ってきて良かったなと思っていると、玄関から賑やかな足音が聞こえてきた。

「ただいまヨ〜。あ、銀ちゃん、1人で何食べてるアルか!」

見つかったのでしぶしぶという顔で二人にも分けてやる。

目敏く気が付いた新八が、菓子の意味を説明してしまった。

「あ、これ、今流行ってるやつじゃないですか?ドラマで使われて、今年のホワイトデー用にバカ売れしてるやつですよねっ」

「へえ」

「……それじゃ、俺は帰るわ」

何食わぬ顔で立ち上がり玄関に向かう土方を、黙って追いかけてくる銀時。

靴を履く土方の襟を掴んで手前に引っ張ると、後ろによろけてきたので手のひらで支え、耳元に囁いた。

「ありがとう」

「……貰いもんだって言ったろ」

「うん。でも、真っ赤だし」

前を向いたまま普通に言ったつもりだったが顔に出てしまったようだ。

きっとすっごく嬉しそうに笑ってる。それが分かるから土方はよけい顔が熱くなって振り向けなくなった。





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ホワイトデーネタはほとんどないなぁ、そういえば。
…あ、銀さんがチョコ貰った気になってるのに、お返ししてないな(笑)
ま、いいか…


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