原作設定(補完)

□その3
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♯21

作成:2015/04/18




ラブホ、深夜。

一仕事終えて先に寝てしまった銀時に寄り添い、うとうとし始めた土方は眠気もぶっ飛ぶ寝言を耳にした。

「こっちおいで、抱っこしてやるから。可愛いよ、沖田」

そしてそのまま、ぎゅーーっと抱き締められる。

『な、なんだそりゃぁぁああ!!』



いつものように陽が上る前に、寝てる銀時を残したまま部屋を出た土方。帰り道、屯所、仕事中、頭の中にぐるぐるとあの寝言と想像が渦巻いていた。

『あいつと総悟が?いやいやいやいや、ないだろ、そりゃあ……でもあいつらドS同士で気が合ってたし…その延長で、俺と二股……いやいやいや…総悟にそんな様子はねぇ』

『ハッ。沖田っていっても総悟だとは限らねーよな。あいつ総悟のことは“沖田君”って呼んでたし、他にも沖田はいっぱい……って、二股には変わりねぇぇええ!!』



悩んでどんどん落ち込んでいく。

このままではまともに仕事ができなくなりそうので、はっきりさせようと万事屋に向かった。

『問い詰めて?二股なんてかけられてたまるか。…あいつと別れることになんのかな…』

真実を知りたい気持ちと知りたくない気持ち、それに合わせて足取りも変わるため、いつもよりかなり時間がかかってしまった。

万事屋の前でさらに扉を開けるか開けずに帰るか悩んだが、帰っても何も解決しないので思い切って開けてみた。奥からドタドタと足音と怒鳴り声。

「こらぁぁああ、土方ぁ!!てめっ、このウンコたれっ………あれ?」

廊下を黒い子猫が走ってきて、土方の身体を駆け上がり肩のあたりでシャーッと唸るが、銀時はその横にある『誰がウンコたれだぁぁああ!』と怒りあらわな土方の顔のほうが怖かった。



ソファーに正座した銀時の頭には、言い訳が間に合わず殴られてできたたんこぶ。

そしてソファーの回りをチョロチョロ走り回る…。

「……猫……」

「そうなんです。飼主が見つかるまで預かってるんですよ」

「…言えよ、最初から…」

「や…勢いで付けた名前が名前なんで…恥ずかしいじゃん…」

さんざん悩まされた寝言のオチがこれかよ、ともう何十発か殴ってやりたい気分だ。

が、バレたことを幸いに、銀時はさっきの黒猫を抱き上げ嬉しそうに言う。

「こいつ、黒くて可愛いから土方ってつけたのに、俺に全然懐かねーんだ」

何気なく可愛いと言われた土方のほうが恥ずかしくなってしまうが、銀時は無意識だったらしく今度は寄ってきた白猫に話しかけた。

「お、沖田、抱っこするか?よしよし」

「……沖田……」

「ほら、目つき悪くてちょい憎たらしい顔してんだろ。こいつは抱っこして〜って寄ってくんだ、可愛いだろ」

土方を悩ませて苦しめたところといい、本当に沖田にそっくりだ。

もう一匹、新八の膝で転がってる虎猫がいる。

「……じゃそいつが…」

「必然的に近藤さんです」

万事屋三人に一匹づつ抱っこされてキメポーズ。

「三匹揃って、万事屋真選組にゃん!」

こいつらは仕事もしないでずっと猫と遊んでたんじゃないかと思えるほどの完成っぷりだ。

はしゃぐ三人に、土方は内心深い溜め息をつく。勘違いで良かった。

「つーか、お前どうしたんだ?隊服のまんまで…」

「………いや…時間ができたから…」

『言えない…幸いこいつは何も感付いてないみたいだし、一生黙っていよう』

土方から会いに来てくれたのを単純に嬉しがってる銀時に気を使ったのか、新八が神楽を引っ張って立ち上がる。

「じゃあ、僕たち買い物に行ってきます。あ、土方さん、上だけでも脱いだほうがいいですよ、毛がいっぱいつくから」

「だったら下も脱いだほうが……痛い痛いよ、多串くん」

「これ使ってください」

「ああ、ありがとう」

新八が出してくれたハンガーに上着を掛けて振り返ると銀時が大あくびしてるから、銀時の隣に座りながら聞いた。

「眠てーのか?」

「あ〜…こいつら夜行性じゃん。電気消した途端、定春まで一緒になって大暴れ……」

「定春って……あんなデカイのと暴れたら、そいつらつぶされんじゃねーの」

「あいつ人間は踏むくせに猫はちゃんと避けんだよ」

そう話している間に猫土方が土方の膝の上に乗ってきて、ベストポジションを探した後、首を伸ばして寝てしまった。

「こいつ…俺が一番可愛がってんのに全然信用しねーし、ちっとも近寄って来ねーのに、よりにもよって多串くんの膝を独り占めですかコノヤロー」

拗ねてそう言った銀時に、なんだか自分のことを言われたような気がした。猫土方の代わりに、銀時の手を握って言う。

「……人間のほうが懐いてんだからいいだろーが……」

土方のデレに銀時は照れながら笑うが、そのデレに二股を疑った罪悪感が含まれているのを知らない。

すやすや眠る猫土方を見ていたら、自分も昨晩はあまり眠れなかったのを思い出し土方も眠くなってきた。



買い物から帰った新八たちは、ソファーで並んで寝ている銀時と土方、二人の隙間に万事屋真選組が埋まるようにくっついて寝ていて、幸せそうだと笑ってしまった。





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ちょっと前に同じ出だし(沖田ネタ)で書いたばかりでした。
猫ネタもありがちでした。
ありがち作家の本領発揮(笑)
猫といえば…ホウイチ篇の銀さんは可愛かったなぁ。


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