原作設定(補完)
□その2
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♯11
作成:2015/04/12 修正:2016/03/27
朝食のために食堂へやってきた近藤は、いつも先に来ている土方がいないので小さく笑う。
「トシはまだか、めずらしいなぁ」
「様子見てきます」
「いやいい。聞きたいことがあるから俺が行ってくるよ」
立ち上がった山崎を制して近藤は副長室に向かった。部下をこき使わない、ほんとにフレンドリーな局長である。
「おい、トシぃ、まだ寝てんのかー?」
襖をボスボス叩いてみるが返事がないので開けてみると土方は起きていて、隊服ではない奇妙な服を着込んだ彼は振り返り、
「近藤氏、おはようでござる」
いつものクールビューティーな笑顔ではなく、三割増しぐらいに大きい瞳でにっこり笑った。
口をあんぐりと開けた近藤は“彼”の名前を叫んだ。
「………トッシィィイイ!?」
食堂に戻った近藤を隊士が囲んでざわついていた。
元凶のトッシーは朝食を出して貰い、マヨネーズをブリブリ盛りながら嬉しそうに食べている。
それを見ながら近藤は頭を抱えた。
「なんてこった。よりによって今日トッシーが出て来るとは…」
妖刀によって作られたヘタレたオタク人格のトッシーは、あれからときどき出るようになった。
いつもなら非番にして好きなことをさせておくと2日ぐらいで戻るのだが、今日は真選組副長として出動しなければならない大事な式典がある。
「思いっきり殴ったら戻るんじゃねーですかぃ」
「それ人間にやっちゃダメだから」
近藤に嗜められると、舌打ちして1tと書かれたハンマーを下ろす沖田。
相手が土方だけにこっそり隠れてやりかねない沖田に、山崎がさっと口を挟んだ。
「万事屋の旦那に相談してみたらどうですか?」
「あ?なんであいつ?」
「トッシーで出掛けても、万事屋から帰ると副長に戻ってるんですよ、なぜか」
万事屋と遊ぶようになったことを親友ながらに嬉しく思っていた近藤だったが、そう言われてみれば、軽い足取りで出かけていったトッシーが、ぐったりした土方で戻ってくることが多かったような気がする。
その原因が銀時にあるのなら、今日は藁にも縋りたい気持ちだった。
「よし!すぐに万事屋を呼べ!」
15分後、パトカーでサイレン鳴らしながら連行され、屯所の広場に案内された銀時。
不機嫌そうな顔をしていた彼だったが、
「坂田氏ぃぃ」
と、隊服を着たものの甘えた声で駆け寄ってきて背中に隠れた土方に、連行された理由を察して溜め息をつきながら近藤を見る。
「………で?」
「お前なら戻す方法を知ってるって聞いたんでな。頼むよ」
ぱんと両手を顔の前で合わせて頼む近藤の頼みをきいてやる義理はないが、土方が今日のために忙しく働いていたのは知っていた。
彼のためにも協力しておいたはうがいいと思い、もう一度溜め息をつく。
「……………ここで?」
「? できないか?」
「……ま、別にいいけど」
頭をポリポリ掻きながら、後ろに立つトッシーに向き直った。
どうやら隊服を無理矢理着せられたことがご立腹だったようで、
「坂田氏ぃ、拙者こんなダサい服着たくないでござる」
拗ねた口調で言ったトッシーの言葉に、隊士達が『お前に言われたくねぇぇ』とツッコミを入れているような顔をしていた。
隊服を着ていると土方そのもので、こんな風に甘えられると戻すのが残念だがお願いされたから仕方ない。
「うん、そーな」
銀時は頭をぽんぽんと叩いてやると、隊士達が見守る中トッシーの腰に手を回して引き寄せ、何か言おうと開いた口を唇で塞いだ。
「…!?……んん〜っ…」
想定外の行為が目の前で展開したことに動けないでいる近藤たち。
『えええええぇぇ!?』
銀時の背中しか見えないが、ソレがどんどん激しくなっているのはトッシーの手で見てとれた。
銀時の体を押し退けようと力を入れていたが、離れないのでぎゅっと着物をきつく握りしめ、しばらくするとぱたっと力を無くして落ちた。
気を失った?と思われた手が再び持ち上がり、銀時の腕をぽんぽんと叩く。銀時は一旦離れてから、何度か小さくオマケのキスをする。
「…ん…」
「…おはよ、多串くん」
「あ?…なん…だ?」
「トッシーになってたんだよ」
「ああ…悪ぃな…」
またかと思いつつ、土方はぼーっとする頭で現状を把握しようと辺りを見回し、ようやく銀時の向こう側に並ぶ微妙な顔した近藤以下、隊士達に気が付いた。
それから賢い頭脳をフル回転させて答えを導きだし、
「な……な……なにしてくれとんじゃぁぁぁあああ!!」
いつもの元気いっぱいの鬼の副長に戻った土方は、真っ赤になって銀時を殴り飛ばすのだった。
痛い目もみたが、内緒にしていた2人の仲を近藤たちにバラすことができたし、久し振りに会えてたっぷりちゅーもできたし、銀時だけが得をした朝でした。
おわり
ありがちだねぇ(笑)
私の読書傾向ではトッシーはみんな可愛い系です。
エロいことが苦手も定番。
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