原作設定(補完)

□その53
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情報収集にかけてはさすがプロというべきか、小1時間ほどで土方の携帯が鳴る。

かぶき町でもなく真選組からほどなく離れたちょっとお高めの居酒屋で銀時が目撃されており、詳しい聞き込みは土方自ら行うことにした。

当然のように新八と神楽も着いて行こうとするが、

「ふぇっ……うわぁぁぁぁぁぁん!」

唐突に銀時が鳴き声を上げる。

「ぎ、銀さん!?」

「どうしたアルか? おしめが濡れてるアルか?」

「神楽ちゃん、おしめはしてないよ。中身は銀さんなんだから」

意思の疎通ができるのだから言いたいことがあるなら態度で示せばいいし、ずっとそうしてきた。

のに、癇癪でも起したみたいに泣き出され、もしかして何かあったのかと心配する子供慣れしていない新八と神楽。

が、土方は小さく溜め息をつき、

「抵抗しても無駄だ。騒ぐなら置いていくぞ」

そう言ったら、銀時はぴたりと泣き止み、舌打ちでもしているかのように顔をしかめた。

「……ウソ泣きアルか?」

「ウソ泣きだな」

「土方さん、よく分かりましたね」

「昔、総悟が近藤さんの気を引こうと何度かやってたことがある」

納得できたところで、4人は万事屋を出た。

銀時がダダをこねるので移動中は土方が抱っこして歩いているが、市民の皆様から注目されるわ、隊士たちに見つからないかとヒヤヒヤするわ。

なんとも居心地が悪い思いをしながら、なんとか例の店にたどり着く。

店は準備中だったけれど、土方の伝家の宝刀(警察手帳)を見せたら話を聞かせてくれた。

目撃情報は取れているが、改めて、持参した写真を見せて確認する。

「こいつなんだが……」

「ああ、昨日来てたよ。初めてみる顔だけど、目立つ頭だから覚えてる」

「誰かと一緒だったか?」

「三人連れだったな……一人は長髪の侍で……」

心当たりがありすぎる新八と神楽は内心で『げっ』と声を漏らした。

桂に間違いないだろうが、土方が同席している以上それを言うわけにはいかない。

とはいえ、"長髪の侍"と聞いて土方だって真っ先に思い浮かぶのは桂のことで、小さく眉を寄せる。

銀時と桂の繋がりを黙認しているとはいえ密会しているとなれば面白くない。

しかし、何か言おうとする前に店主が言った。

「それと、もう一人……やたら声のでかい男も一緒だったな」

「坂本さん!!?」

「知ってるのか?」

「銀さんの友達です。坂本さんと一緒だったなら、銀さんがおかしなことになっても納得がいきます」

「……何者だ?」

「あ、変な人じゃないですよ」

「十分変な人アル」

「そういう変じゃなくて……星間で商売をしている人なんです。天人との繋がりも多いので、おかしなものも手に入れやすいというか……」

原因の一端は分かったものの、それだけでは銀時を元に戻す手がかりにはならない。

土方は腕の中の銀時に向かい、

「……そいつから何か受け取ったのか?」

そう聞いてみたのだがやっぱり無視された。

何かある、と言っているようなものだが、相手が子供がでは聞きだせそうにない。

ので、土方はもう一度店主に訊ねる。

「他に何かなかったか。話してたこととか、持っていたものとか」

「いやぁ、俺は厨房で手一杯だったし……あ、接客していた子ならもうすぐ出勤してくるはず……」

と言っていたらタイミングよく奥の部屋から、元気な声が聞えてきた。

「おはようございまーす」

「あ、来た来た。彼女なら何か知ってるかも」

「話してもいいか?」

「店の準備があるからちょっとなら……」


つづく..
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