原作設定(補完)
□その53
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奥の部屋に入りソファに座って新八の出してくれた茶を飲んだら、さすがの土方も落ち着いてきた。
図々しく自分の膝の上に座ってぴったりとくっ付いている銀時を無視し、土方は向かいに座る新八と神楽に聞くことにする。
「で? なんでこうなった? いつからこうなんだ?」
「今朝からです。昨日までは普通だったんですけど……」
「起きて来ないから部屋に入ったらこうなってたネ」
「……理由は分からない、ということか」
念のために膝の上の銀時を見たが、
「だあっ、ばあっ、たりゃっ」
と何か言ってるようだったけれど、ちっとも聞き取れないで終わった。
しかし、こんなワケの分からない事態になっている社長だけれど、従業員はちゃんと立派に出来ることをやってくれていたようだ。
「銀ちゃん、昨日は飲みに行って酔っ払って帰ってきたネ」
「……今日の昼間に俺と会う約束が会ったのに飲みに行ったのか」
じろりと銀時を睨んだが、知らん振りで土方の膝を堪能している。
「昼間に電話がかかってきて、飲みに誘われたみたいなんですよ」
「おごらせるって言ってたアル」
「……ソイツに会ったあとにこうなった……ってことはソイツが怪しいな」
「でも誰かは分からないネ」
「本人に聞けばいいだろうが。知り合いの名前をあげていって、首でも振らせればいい」
「……それが……やってみたんですが、教えてくれないんです」
「教えない?」
「誰の名前を言ってもとぼけるんです」
それがどういう意味か分からなかった土方は、膝の上の銀時を抱き上げて、
「てめー、昨日は誰と飲んだんだ? 総悟か?」
一番怪しいヤツの名前を挙げてみた。
すると銀時はつーんとそっぽを向いて"教えない"アピールをする。
なるほど、と納得したけれどムカついた土方は、銀時を膝の上に戻し、ほっぺたを引っ張ってやんわり折檻。
「でも、銀さんが飲みに行った店が分かれば、誰と会ってたか分かると思うんです」
「ああ……そうだな」
「知ってる店には行ってみたけど、来てないって言われたアル」
「なので、土方さんを待ってたんです」
「ん?」
「土方さんと一緒に行ったことのある、普段行かない店とかじゃないかと思って……」
名案ではあるが、そう簡単に行くかな、と怪しむのが土方の仕事でもある。
膝の上の銀時に、
「相手が誰かバレるのも時間の問題だぞ? 今のうちに白状したらどうだ?」
と聞いてみたのだが、やっぱりそっぽを向かれた。
それは、そんなことじゃ相手がバレない、と言ってるようなもの。
「どうやら俺の知ってる店じゃなさそうだ」
「……そうですか……」
土方が言うなら間違いないだろうと、新八と神楽はガッカリする。
2人にこんな顔をさせておいて、シラを切ろうとする銀時に、土方は"奥の手"を使う決心をした。
懐から携帯を取り出し、
「任せろ。真選組の情報網を使ってなんとしても割り出してやる」
そう言って山崎の携帯番号を押す。
「だぁつ!」
即座に銀時が抗議の声を上げるが、
「職権乱用だって言いたいのか? 違う。子供になっちまった市民を助けるためだ」
にやりと笑った土方にそう言い負かされてしまった。
不貞腐れる銀時に、新八と神楽はようやく解決への手がかりが得られそうでホッとするのだった。
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