原作設定(補完)

□その53
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#524

作成:2020/02/15




時計の針が1時を超えたのを見て銀時は小さく溜め息をつく。

日付が変わって1時間。

もうお目当ての人物が万事屋を訊ねてくることはないだろう。

ギリギリまで粘って、日付が変わっても諦めきれずに待ってみたけれど、さすがに今日は無理そうだ。

がぶき町は夜の街でまだ外は騒がしいけれど、こんな時間に外出するようなヤツでもない。

それに日付は"昨日"だから意味があったのであって、今日になってしまえば尚更だ。

バレンタインデー。

言わずと知れた定番のラブイベントだ。

生まれて此の方"義理"にしか縁の無かったイベントだったけれど、今年は当てがあった。

イケメンで働き者でツンデレで可愛くて喧嘩っぱやいあの子に、チョコを欲しいと強請ってみたのは1つ月も前のこと。

心底嫌そうな顔で睨まれたけれど、何度も何度も何度も何度も何度もなんっっっっっっどもお願いしたら、しぶしぶ了承してくた。

だけどいつ何事か起きるかも分からない仕事のため、必ず来れるとは約束はできない。

そしてそれは銀時も分かっている。

「仕方ないよなー」

そう呟いて銀時は部屋の明かりを消した。

日付は変わってしまったけれど、チョコを用意してくれているならそのうちくれるだろう。

「……うん、仕方ねーよ……うん……」

もう一度、自分に言い聞かせるように呟く。

分かっているのに諦めて寝てしまうことができなかった。

暗い部屋でソファに座りぼーっとしていたら、玄関の扉がガタッと小さく音を立てたのが聞えてきた。

鍵がかかっているので開きはしないけれど、誰かが扉を開けようとした音だ。

バッとソファから立ち上がり玄関を見ると、かぶき町のネオンを背後に浮かび上がった人影。

扉の前に立ったままなにやらゴソゴソしているようなその影は、見間違えるはずもない待ち人のもの。

銀時は玄関に飛んで行って鍵を外し扉を開けた。

驚いている土方の腕を掴んで家の中に引き込むと、そのままぎゅっと抱き締める。

「多串くん! いらっしゃい!!」

熱烈歓迎を受けてようやく土方も我に返ったようで、

「……わ、悪い……起しちまった、か?」

「起きてたし! 待ってたし!」

「……電気が消えてたからもう寝てるかと……遅くなって悪い……」

「全然大丈夫!!! ありがとう!!! 来てくれて!!!」

土方の手にはちゃんとソレっぽいものが入った紙袋が握られていて、"日付が変わったら意味がない"とか忘れて銀時は猛烈に喜んでしまう。

土方のほうも、間に合いそうにないからもう明日でいいか、と思ったはずなのに、銀時が待っているような気がして、どうしても気になって来てしまった。

なのに部屋の明かりが消えていて、自業自得だけれど少しがっかりしながら、チョコだけ置いて行こうかと扉を開けてみたが開かず、メモでも挟んで玄関前に置きっぱなしにしようとしたのだ。

そしたら銀時がものすごい勢いで出て来て、ものすごく大喜びしてくれている。

申し訳なさもがっかりも吹っ飛んで、土方も嬉しくなった。

銀時の背中を抱き締め返しながら土方は笑う。

「……ありがたく食いやがれ」

「うん!!!!」


ハッピーバレンタイン!


 おわり



"間に合わなかった"ネタ。
……似たような話は書いてるけど……大丈夫だよね、きっと!(笑)
チョコ1つで大喜びする銀さんがものごっさ可愛いと思います。
今年もバレンタインネタがいろいろ書けてよかった!
………………原作設定以外?
……思いつかなかったんだもの(笑)

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