原作設定(補完)
□その53
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部屋に戻ると早速風呂に入った。
こっちでも"一緒に入る"ということを土方が拒否らず、堂々とされると逆に銀時のほうがちょっと恥ずかしく
入ってみるとわりと大きめの湯船だったので、男2人で向かい合ってもゆったりできている。
むしろもっと狭くても銀時的には良かったのだが、土方がのびのびして嬉しそうなのでこれはこれで良し。
景色を堪能して、風呂を堪能して、湯かけっことか潜りっことか風呂の遊びを堪能して、ようやく落ち着いた2人は風呂の淵に背中を預けてふぅと深い息を吐いた。
来るまでは不安でしかなかったけれど、こうしているともうそんなことはどうでも良かったと思える。
土方のほうは銀時のそんな気持ちを知らないので、心底堪能しているように、
「気持ち良いな……来て良かった」
そう言ってくれたので銀時としても嬉しい。
が、ふと気になっていたことを思い出した。
「なんで、そんなにこの温泉に来てみたかったの?」
普段から2人で会うときは近場ののんびりウロウロすることが多い。
それは土方が忙しいせいでもあるけれど、面倒くさいとかそういうのもあって、それで別に不満はないと思っていた。
それなのに急に「行きたい」と言いだし、なんとか回避しようとする銀時を懐柔してまでここへ来た。
"温泉"だけならもっと他に近くて良いところもあったはずなのに。
それを全て見抜かれていると悟った土方は、気恥ずかしそうに答えた。
「……俺ら……近場で飲んだり遊んだりするだけだっただろ……俺は別にそれでも良かったんだけど……」
『だよねー』
「メガネとチャイナが土産をくれて、温泉が楽しかったって」
『え? アイツら土方くんに土産なんて買ってたの? 聞いてないよ。そして黙って渡してたの?』
「それ聞いたら、二人で長い時間ゆっくりしたことねーなぁ、って思って……」
『……そうだね』
「旅行もいいなって考えたんだけど、知らないところは苦手だし落ち着かないだろ? だから、てめーの知ってる、お勧めの温泉とかでゆっくりできたらなー、って」
『思い出して。勧めてないよね? むしろ嫌がってたよね?』
「……無理言って悪かったな」
強引だった自覚はあるらしい土方に、殊勝にそんなことを言われたら何もかも許してやりたくなるのが"惚れた弱み"というやつだ。
銀時はふっと笑う。
「それじゃあ、次は土方くんのお勧めの場所に連れてってくれるんだよねー」
「えっ……いや……俺はあんまり面白い場所とか……」
「んー?」
「…………わ、分かった……考えておく」
戸惑っていた土方だったが、今回の自分みたいに銀時を喜ばせられるなら、と決意して真剣な顔で頷いた。
それが可愛くて銀時はまた笑ってしまうのだった。
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