原作設定(補完)

□その53
24ページ/25ページ



部屋に戻ると早速風呂に入った。

こっちでも"一緒に入る"ということを土方が拒否らず、堂々とされると逆に銀時のほうがちょっと恥ずかしく

入ってみるとわりと大きめの湯船だったので、男2人で向かい合ってもゆったりできている。

むしろもっと狭くても銀時的には良かったのだが、土方がのびのびして嬉しそうなのでこれはこれで良し。

景色を堪能して、風呂を堪能して、湯かけっことか潜りっことか風呂の遊びを堪能して、ようやく落ち着いた2人は風呂の淵に背中を預けてふぅと深い息を吐いた。

来るまでは不安でしかなかったけれど、こうしているともうそんなことはどうでも良かったと思える。

土方のほうは銀時のそんな気持ちを知らないので、心底堪能しているように、

「気持ち良いな……来て良かった」

そう言ってくれたので銀時としても嬉しい。

が、ふと気になっていたことを思い出した。

「なんで、そんなにこの温泉に来てみたかったの?」

普段から2人で会うときは近場ののんびりウロウロすることが多い。

それは土方が忙しいせいでもあるけれど、面倒くさいとかそういうのもあって、それで別に不満はないと思っていた。

それなのに急に「行きたい」と言いだし、なんとか回避しようとする銀時を懐柔してまでここへ来た。

"温泉"だけならもっと他に近くて良いところもあったはずなのに。

それを全て見抜かれていると悟った土方は、気恥ずかしそうに答えた。

「……俺ら……近場で飲んだり遊んだりするだけだっただろ……俺は別にそれでも良かったんだけど……」

『だよねー』

「メガネとチャイナが土産をくれて、温泉が楽しかったって」

『え? アイツら土方くんに土産なんて買ってたの? 聞いてないよ。そして黙って渡してたの?』

「それ聞いたら、二人で長い時間ゆっくりしたことねーなぁ、って思って……」

『……そうだね』

「旅行もいいなって考えたんだけど、知らないところは苦手だし落ち着かないだろ? だから、てめーの知ってる、お勧めの温泉とかでゆっくりできたらなー、って」

『思い出して。勧めてないよね? むしろ嫌がってたよね?』

「……無理言って悪かったな」

強引だった自覚はあるらしい土方に、殊勝にそんなことを言われたら何もかも許してやりたくなるのが"惚れた弱み"というやつだ。

銀時はふっと笑う。

「それじゃあ、次は土方くんのお勧めの場所に連れてってくれるんだよねー」

「えっ……いや……俺はあんまり面白い場所とか……」

「んー?」

「…………わ、分かった……考えておく」

戸惑っていた土方だったが、今回の自分みたいに銀時を喜ばせられるなら、と決意して真剣な顔で頷いた。

それが可愛くて銀時はまた笑ってしまうのだった。


.
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ