原作設定(補完)
□その53
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「……あ、そ。だよねー、土方くんはモテモテだから俺なんか必要ないもんね。俺が盛ってるから仕方なく付き合ってくれてただけなんでしょ。悪かったねー、しつこくして」
言いながら銀時は心底自己嫌悪。
付き合っているわけでもないのに他の女に取られたと拗ねて、未練がましく付き纏ってるヤツみたいだ。
しかし、こんなことを言いたいわけじゃなかった、と心の中で繰り返す銀時に、返ってきた土方の言葉も予想外だった。
「て、てめーだって俺じゃなくても良かったんだろうがっ。一度だって聞かなかったくせに!」
「…………は?」
「声駆けやすいようにゆっくり一服してたのに、てめーは一度も"次にいつ会える"とか"たまには朝まで居て欲しい"とか言ったことねーだろ! てめーだって他にいくらでも相手が居るから俺なんてどうでもいいんだろうがっ!」
銀時の頭の中で?マークが飛び回る。
だけど自分の頭の仲だけでは解決しなさそうだったので、恐る恐る聞いてみた。
「えっと……それは、そう言って欲しかった、と言ってるように聞えるんですが……」
「そ、そう言ってるんだよ」
「……でも……ゆっくり一服、って……初めてんときから吸ってたよね?」
「そ、そうだよっ」
肯定する土方の顔は真っ赤で、銀時は首を傾げる。
つまり"初めてのときから土方は引き止めて欲しかった"ということになるわけで。
何度も会っていたのにそんなこと気付かなかった。
そして土方のほうも、銀時の気持ちに気付いていないから黙って煙草を吸うしかなかったのだろう。
銀時が"自分の気持ちに気付いた"はずなのに何も言わないため、土方はどんどん居たたまれなくなり、今にも逃げ出しそうな顔をして、
「……っ……お、俺、もう仕事に戻……」
そう言って実行しようとしたので、その手を掴んだ。
ずっとずっと好きだったのに、ずっとずっと待たせてしまったらしい。
手遅れでないのなら、やり直せばいいのだ。
「じゃあ、改めて言う。次、いつ会える? たまには朝まで一緒に居て欲しいんですけど」
土方の顔が三段階ぐらい変化するのを間近で見ながら、銀時は笑った。
追記
「ゴリさん。副長さんの見合いってどうなったの?」(本人には聞きづらい)
「あー、あれなぁ……向こうのお嬢さんに、トシは良い人だけど結婚するにはちょっと、って言って断られたんだよ」
「……へ、へえ」
「まあトシが全然気にしてない……っていうか、なんだかホッとしてるみたいだから、まあいいか、って」
「……へ、へえ」(照れ)
おわり
煙草を吸っている土方に声をかけられない銀さん、を書きたかっただけの話。
最初じゃないかーい!
まあ、オチはいつも通りの両片想いでした。
だって…………好きなんだもの。
お互い好きなのにモダモダやってる二人が(笑)