原作設定(補完)
□その53
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「いいから……聞けって言ってんだろうがぁぁぁ!!」
と、土方にしか聞えないぐらいの小声で叫んで、銀時は腕を掴むと路地裏に引っ張って行った。
小声にしたのは注目されたくないだろうなぁ、と土方のことを気遣ってのことだ。
そして意外にも土方は暴れもせず大人しく引っ張られて後を着いてきたけれど、通りの人には話し声が聞えないところまで来たとき手を振り解かれる。
「もういいだろ。なんだ、話って」
"人には聞かれたくない"という銀時の意図を汲んでくれたようだが、言い方は実に面倒くさそうだ。
だから本当は、静かに説得力のあるように且つちょっと恥らいながら告白しようと思ってたのに、シュミレーションではバッチリできていたのに、ついつい憎まれ口をたたいてしまった。
「……土方くん、結婚すんだって?」
「……どこで聞いた」
「おたくの局長さんは口が軽いからね。大丈夫? アレで警察幹部って」
「……めでてー話だからだろ。それに、どうせあの女に話したところに居合わせただけだろうが」
「じゃあホントに結婚すんだ」
「……悪い話じゃねーからな」
「"悪い話じゃない"ねぇ……そんなカンジ? 好きだからとかねーの?」
「……見合いなんだから、そんなもんだろ」
「相手の子、可哀想。いい子なんじゃなかったの?」
「……うるせーな。てめーには関係ねーだろ」
「関係ない? 俺と寝てんのに?」
今度こそはっきりと怒らせて、まるでテカテカ黒光りする例の虫を見るかのように睨まれた。
銀時の昨夜のシュミレーションの中の土方は実にリアルで、"こう言えばああ言うだろう"という反応は想像通りだった。
だからそれに対する返事も考えていたのに、一番言ってはいけないことを言ってしまっている。
自覚はある、のに止められなかった。
なにせ万が一にでも、近藤の勘違いで土方は本当は結婚する気ないんじゃないか、という可能性があるかと思っていたのに、土方はあっさり認めてしまったのだ。
そのせいでやけっぱちになっていたのだと思う。
土方に睨まれて内心では『あぁぁぁぁぁぁぁ、俺の馬鹿ぁぁぁぁぁ!』と叫びながら、さらに余計なことを言ってしまった。
「もう何度も寝たもんね、随分良さそうだったのに、そんなんで女とヤレんの?」
「……だからなんだ……何が言いてぇんだ、てめーは」
「もし土方くんがぁ、女で満足できないっていうなら? 俺が会ってやってもいいよ、今までみたいに」
「…………必要ねー」
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