原作設定(補完)

□その53
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『やっぱり2人きりのときじゃないとダメだ……それでいてエロくないとき……仕事中……見回りしてるところを捕まえて人目のつかないところ捕まえて告白しよう! そうしよう!』

決意が固まって勢いよく立ち上がったが、そこでようやく部屋が暗いことに気が付いた。

近藤の話を聞いてからの記憶がおぼろげで、新八たちとの食事どころか、どうやって帰ってきたのかも覚えていなかったけれど、明かりの点いていない部屋は完全に夜だ。

当然、土方が町を見回りしているはずもなく、銀時は布団に座り直す。

勢いがそがれてしまうとついつい考えなくていいことも考えてしまうわけで。

『待てよ。会話のシュミレーションもしておいたほうがいいな。じゃないと本番で失敗しそうだ。えっとまずは……俺らがこういう関係だってバレたくないから用も無いのに話かけるなって言われてるから、きっと声かけたら睨まれるだろ? そしたら俺もムカついて、じゃあいいやってな…………ダメじゃぁぁぁぁぁん!!!』

『落ち着け俺! 冷静になれ俺! まあまあまあ、いいからちょっとこっちに来なさいよ、って手を掴んだらきっと抜刀されるから、ぎゃああああ、もういいよって逃げ…………やっぱりダメじゃぁぁぁぁん!!』

『あれ? なんだ? 何が悪いんだ? 頑張って抜刀されたのをかわしてなんとか人目のないところに連れて行く………できるだろ、俺はYDO(やればできるおっさん)なんだから! だれがおっさんじゃ! …………うん、出来る出来る。そしたら告白…………できるかな、なんだから改まると恥ずかしいな。いい年こいてモジモジしちゃいそうだな……そしたら土方はウザがって帰…………ダメだぁぁぁぁぁ!!』

『モジモジしてねーですぱっとはっきり告白しろ俺! そうだ! そしたらきっと土方はキュンとして、嬉しそうにはにかんで、俺もずっとてめーのことが好きだったんだって…………言ってくれるわけねぇぇぇぇぇ!! 無理! それは絶対無ぇぇぇぇ!』

夜中に布団の上で、声も出さずに喚いて暴れている姿は滑稽だったが、幸い誰も見てない。

さんざん苦悩したあとは、またちょっと冷静になった。

『……というか、土方が俺を好きなんてことねーんだから、どう告白しようが、どういう態度取られようが、別にいいんだよ。すっきり忘れるためにも告白しよう、っていうだけなんだからさ』

初心に返ってそう結論付けた銀時は、再度布団に倒れ込んだ。

明日町で土方を見つけたら、ぱぱっと告白してぱぱっとフラれてぱぱっと忘れよう、と自分に言い聞かせ目を閉じる。




翌日、目の下にくっきりクマを作ってふらふらした足取りの銀時が、かぶき町の町を歩いていた。

昨夜は"結論"を出して目を閉じたものの、結局モヤモヤと考えてしまい、"起きて悶絶して暴れてまた落ち着いて"を朝まで繰り返したのだ。

一睡も出来ずに、それでも告白だけはしようと家を出た。

眠さと緊張で険しい顔をしながら歩いていたら、遠くにやはり同じように険しい顔をした土方を発見。

一人で歩いているところを見ると、"沖田に逃げられてムカついているから"の険しい顔っぽい。

『土方の機嫌が悪いってことは……75案がいいか……』

さんざんシュミレーションした案を思い出すけれど、そうそう上手くいくはずもないものである。

土方も銀時に気付いたけれど、機嫌が悪いせいか面倒くさそうに睨まれた。

それを見たらやっぱりムカッときたけれど、それは昨晩何度も何度も我慢するように自分に言い聞かせたので大丈夫。

そのまま素通りされそうだったので頑張って声をかけた。

「ひ……土方……ちょっと、話、あるんですけど」

「俺はねー」

案の定の素っ気無い返事だったけど、それで引き下がるわけにはいかない。

「俺がある、って言ってんですけど」

「あ、そう。じゃあな」

「だから、ちょっと聞けって」

「"聞け"?」

「……聞いてくださいませんか。おねがいします」

「断る」

取り付く島もない。

だったらもう強行突破しかないではないか。


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