原作設定(補完)
□その52
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#514
作成:2019/12/31
「ヤツラのことが気になる?」
汗ばむ体を背後から抱き締めて銀時はそう呟くように問いかける。
「べ、別に……」
抱き締められた体をほんのちょっとだけ強張らせて土方はそう呟くように答える。
あと十数分で年が明ける夜、2人は銀時の布団の中で甘い時間を過ごしていた。
年末年始に2人が一緒に居られるなんて、想像するのも躊躇われる事案だ。
もちろん、何らかの大ポカをやらかして真選組が解散、とか、何らかの大ポカをやらかして真選組が大晦日の警備から外された、とか、何らかの大ポカをやらかして土方がクビになっていた、とかなら話は別。
が、有り得そうなことでも、今回はどれも当てはまらない。
純粋に土方は非番で、真選組は大晦日で賑わう市内の警備をしているはずだ。
まあ、だからこそ土方が節々で気もそぞろになってしまうのだが。
銀時はもう一度ぎゅうっと抱き締めぼやく。
「せっかく非番なのに休まらないじゃん」
「…………十分休んでる」
「最初は"非番だー"って嬉しそうだったのに」
「嬉しいよ、当たり前だろ」
「もうちょっと俺に集中して欲しいんだけどなー」
「……し、してる」
銀時が拗ねていることに気付いて、土方は自分を抱き締めている銀時の腕をきゅっと掴む。
土方が時間通りに万事屋にやってくるまで半信半疑だった銀時は、土方を顔を見てほっとしながら嬉しそうに笑った。
それからいたせりつくせりのお殿様待遇を受けたのに、確かに"心ここにあらず"だったのは失礼だ。
土方が猛省していることに気付いた銀時はふっと笑う。
「案外、多串くんに休んで欲しくてそんなゲームしたんじゃねーの?」
「…………提案者は総悟だぞ。んなわけねーだろ」
今回、こんな日に土方が非番になったのは、ちょっと早めの忘年会を開いたときのゲームに勝ったからだった。
年末年始の休みをかけたビンゴゲームで、土方は一抜けをかました。
もちろん、真選組副長が大事なときに非番で居ない、というのは問題じゃないかとざわついたのだが、局長の一声で非番は決まってしまったのだ。
毎日毎日毎〜〜〜〜〜〜〜日頑張ってる土方へのご褒美、らしい。
そう決まったときの沖田の顔を見ているので、土方はこれが偶然の当選だったことを知っている。
いや、むしろ、
「自分が非番になりたくて何らかのズルをしていたのに失敗した、とかだろ」
という気さえしていた。
だからざまーみろという気持ちで非番を堪能していた土方だったが、ふとしたときに真選組のことを考えてしまう。
だけどそれが土方の性分だから仕方ないし、だからこそ真選組が成り立っているというところもある。
しかし、そんな自分が嫌だと土方が思っていることを、銀時は分かっていた。
『むしろ沖田くんの狙いは、こうやって土方をもだもだうだうださせることじゃねーの』
なんて考えながらも、土方が非番で自分と一緒にいてくれることは、本当に嬉しくて仕方ないし、感謝している。
「まあ、なにかあったら連絡くれるんだろ? だったらヤツラを信用して多串くんは休むしかないよ。朝になったら新八たちも帰ってくるから、そしたらみんなでお節と雑煮、食おうぜ」
「……ああ……」
なかなか恋人らしいことができていない自分に、銀時は優しすぎるぐらい優しい。
『……甘やかしすぎだろ、俺を……』
そう思いながら土方はモゾモゾと動いて体を反転させると、銀時の正面からぎゅーっと抱きついた。
それと同時に外がわあっと騒がしくなった。
どうやら年が明けたようだ。
「……あけましておめでとう」
「おめでとう。今年もよろしくねー」
「よろしくしてやらー」
そう言ってから唇を重ねる。
これってものすごく普通の恋人っぽいな、と嬉しく思いながら。
おわり
ものごっさイチャイチャしている二人が書けました。
やっぱり銀土はいいなぁ。