原作設定(補完)
□その52
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#519
作成:2020/02/03
早朝の万事屋に電話のベルが鳴り響いた。
無視を決め込もうとした銀時だったが、切れる様子がないのでしぶしぶと受話器を取る。
そして電話の向こうから聞えた声に、はっきりと目を覚ました。
「……はい、よろじゅや銀……」
「万事屋」
「……!? 土方?」
すぐさま時計を見たらまだ5時で、窓の外だって暗い。
まあ土方なら起きていても無理はない時間なのだが、こんな時間に電話は珍しい……というか初めてだ。
「どうした?」
「……てめーに……会いたい……」
「……え?」
「会いたいんだ……屯所まで来てくれるか……」
「屯所? え……でも……」
突然のデレに驚きとニヤケが止まらない銀時だったが、ご招待の場所が屯所だったことに戸惑う。
「屯所に来たら殺すぞ」と何度も言われているからだ。
だが更に切なそうな声で、
「頼む、万事屋」
なんて言われたら承諾しないわけにはいかない。
「すぐ行くから!!!」
電話を切り、着替えて万事屋を飛び出しすのにかかった時間は4分だった。
早朝で人通りのほとんどない道をスクーターでぶっ飛ばし、屯所へ到着。
誰もいない門を突破し、誰にも会わず屯所の入口の扉を開けた途端、
「……え……」
扉の向こうにはずらーーーーーっと隊士が並んでいた。
そして銀時を見るなり、
「鬼はー、外! 福はー、内!」
そう叫んで殻付きの落花生を一斉にぶつけてきた。
事態はすぐに察した……というか、あからさまだ。
「……いてっ、おいっ……ひ、ひじ……」
「鬼はー、外! 福はー、内!」
それでも"首謀者"の姿を探そうとしたのだが、そんな隙がないほどの落花生攻撃に、ここは伝統に則って逃げ出さないと終わらない、と銀時は急いで外へ飛び出す。
追いかけてこられたが、門を出て身を隠したら、彼らは満足したように屯所に戻って行った。
ほどなくして山崎が申し訳なさそうな顔でやってきたので、
「副長さんとこに案内してくれるんだよね?」
「…はい…」
"主犯"のところへ案内させた。
そこには電話のしおらしい声の持ち主とは思えない、ふてぶてしい顔をした男が待っていて、
「お疲れさん」
と上から目線で労われた。
「おめーさ、俺をハメたわけ?」
「鬼役は鬼の副長の土方さんですね、って言われたけどやりたくなかったから、別の鬼を紹介した。なあ、白夜叉殿」
「節分ごときで長年の秘密を軽々しく呼ばないでくれませんか!?」
「久し振りに会えたんだからいいだろうが」
「そうだけどさぁ」
"会いたい"なんて言われて舞い上がった分、ガッカリ感ハンパなく、不機嫌な銀時に土方は小さく笑う。
「報酬は出すし、さっき撒いた豆も集めさせてるから持って帰っていいぞ」
そのために今年は集めやすい殻付き落花生にしたのだ。
「まじでか! ……いやいや、そんなことで銀さんの傷付いた心は……」
一瞬嬉しそうな顔をしたくせにまだ妥協しない銀時だったので、ひじかたは内心で溜め息をつき銀時に近寄る。
のばした腕を銀時の肩にのせ、
「一時間ぐらいなら時間とれるぞ」
「え!? ここでヤッていいの!?」
「いいわけあるか、ばーか」
楽しそうに笑ってぎゅっと抱き付いてやった。
騙されたし地味に痛い思いもしたけれど、土方が嬉しそうなのでまあいいか、と久し振りの抱き心地を楽しむ銀時だった。
おわり
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