原作設定(補完)

□その52
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沖田にそう言われ、土方はきょとんとした後、露骨に不機嫌そうな顔をする。

「んなわけねーだろ」

そう言いきってしまうのは少し悲しいけれど、銀時に懐かれたことなんてないのだから仕方ない。

が、土方がそう思っていることも、沖田には"長年に渡る努力の甲斐"だったのでしてやったり顔だ。

「銀時が頑張ってたのは、近藤さんのために頑張ると、あんたが喜ぶからでさぁ」

「……は?」

「気付かなかったんで? 最初から、アイツはあんたのためにここに居たってーのに」

呆れたようにため息付きでそう言われたが、絶対に"知っていたけど知られないようにしていた"に決まっている。

沖田の性格を知っている土方は、そう確信した。

しかし今までずっと銀時に素っ気無く接してこられた土方としては、沖田に言われて「そうだったのか」とは思いがたい。

よっぽど沖田のほうが気に入られてただろうに。

「……信じられねーな」

「ありゃ。年を取ると疑い深くなっていけねーや」

「うるせー。本当だって言うなら証拠を見せろ」

「証拠ねぇ」

沖田が考えるポーズを取ったとき、庭から話し声が聞えてきた。

どうやら近藤と銀時のようで、沖田は何か閃いたようだ。

人差し指を口元にあてて"静かに"というポーズを取ると、

「銀時が土方さんに甘えてるっていう証拠を見せまさぁ」

そう小声で言って障子に近寄り、そっと隙間を開けて庭を見えるようにした。

土方とついでに山崎もその隙間から外を覗く。

「ったく、銀時はしょうがねーなー」

話しながらここまで来たようで、相変わらずだらしない格好でしれっとしている銀時に、近藤は笑いながら手を伸ばす。

頭を撫でようとしているのだろう。

身長が並んだ土方と違い、近藤のほうはまだ銀時の頭を撫でることができるのだ。

が、銀時はひょいっとその手を避けた。

近藤が笑顔のまま更に撫でようとするが、やっぱり銀時は避ける。

このやりとりが5回繰り返されると近藤は諦めたようで、

「やっぱりダメか」

そう言ってちょっとだけ寂しそうに笑うのだった。

そこまで見て、沖田は障子を閉めた。

アレが沖田の言いたかった"証拠"だとしたら、

「…………どういうことだ?」

「銀時が頭を撫でさせるのは最初っから土方さんだけなんですぜぃ」

「……俺……だけ?」

「そういえば……最近は知りませんけど、昔まだ小さい頃にも撫でられそうになると逃げてましたね」

今までどちらかといえば嫌われてると思っていたのが、そうじゃなかったことになる。

だが長年そうだと思って来た土方には即座に理解できることではなく、"え?まじで?"と頭の上に?マークが見える顔をしていたら、沖田と山崎は肩を竦めあって部屋を出て行ってしまった。

残された土方はもう少し一人で考えたかったのだけれど、まだ外に人の気配があるのに気付いて、そっと障子を開けてみる。

すると庭にまだ残っていた銀時とバッチリ目が合った。

慌てて目を反らしたところを見ると、銀時が見ていたのは土方の部屋で、土方の部屋を見るために庭に残っていた、ということなのだろう。

土方には素っ気無いと思っていた銀時。

でも土方が見ていないところで、こうやって見ていたのかと思うと少し可笑しかった。

「銀時」

「……何」

「ちょっと来い」

面倒くさそうに近寄ってきた銀時に、

「最近どうだ? 問題ねーか?」

そう訊ねたら、きょとんとした顔をされた。

生活態度のことを注意されるのかと思っていたのかもしれないが、違っていたので拍子抜けしつつ答える。

「……ねーよ」

「そうか」

予想通りに素っ気無い態度だけれど、それがフリかもしれないと知っている土方にはもう可愛い態度にしか見えない。

銀時の頭にすっと手を差し出し、イヤなら避けれるようなタイミングだったのにやっぱり銀時は避けなかった。

くしゃくしゃと撫でててやったら、"なんだよ"という顔をされたので嬉しそうに笑う土方だった。



が、土方にはまだまだ知らないことがあった。

頭を撫でられながら、

『ちくしょー、可愛いな。ものごっさムラムラするぅぅぅぅ。身長を追い越したら絶対押し倒してやるからな、待ってろよコノヤロー!』

銀時がそんなことを考えていることを。

そして成長期を過ぎて銀時が、その執念で身長を1cm伸ばすのは半年後の話。



 おわり



予想外に長くなった……
出会った頃のシチュを妄想しすぎた……
もったいないのでいつかまた続きを書きたい……ような気もする……
W副長で年下銀時×年上土方……可愛い……

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