原作設定(補完)

□その52
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そんな感じで今回の"副長による不祥事"は"誤解"というオチに相成った。

そもそもこの話は土方と山崎しか知らぬことだったため、近藤に報告もしてない。

つまりは今までと何も変わりなく、いつもどおりの日になるはずだった翌日。

「銀時遅いな。遅刻なんて珍しい」

朝の会議の席に銀時の姿がなく、いつもなら一番乗りぐらいに来てるのに定刻直前になってもまだ現れない。

近藤が心配しているようだったので、土方が様子を見に行かせようとしたとき、

「鉄、ちょっと様子を見……」

「…はようございまーす」

気だるそうな声で現れた銀時に、全員唖然とする。

ジャケットは手に持ち肩へかつぎ、スカーフは首にかけただけでベストの前は開けっ放し、咥え煙草……かと思いきや、欠伸をしたときに見えたのは棒付きの飴で、死んだ魚のような目でのんびり歩いて自分の席に座った男。

間違いなく銀時だけれど、今まで一度も見たことがない姿だったので「え?」という反応になるのは当然だった。

実は副長室からこの部屋に来るまでにすれ違った隊士たちにも同じ現象が起きている。

席に座ってからも頭をボリボリ掻いてやる気のない銀時に、近藤が恐る恐る声をかけた。

「ぎ、銀時? どうした?」

「何が?」

「えっと…………イメチェン、か何かか?」

それは変貌した自分の様子に対する質問、だと理解した銀時は面倒くさそうに話し出す。

「イメチェンじゃなくて、これが俺の本当の姿? みたいな? 本当は真面目に働くの嫌いなんだよねー。器用だからなんでも出来ちゃうし、戦いのセンスがあるから強いけど、楽して儲けるのが希望でっす」

「な……なんで急にそんなこと……」

「"我慢する必要も隠す必要もない。素でいていい"……って土方が言ったから?」

「え」

土方が関わってると知り、全員が土方に注目する。

言った。

確かに言った。

だけど、

「そこまで変われとは言ってねぇぇぇぇぇぇ!!!!」

力いっぱい叫んでしまう土方だった。




「で? みんなの様子はどうだ?」

銀時の変貌から1週間、土方は山崎に屯所内の様子を観察させていた。

山崎は"銀時が心配なんだなぁ"と微笑ましく思いながら報告する。

「問題ないです。戸惑ってる隊士たちも多かったですが、あんなこと言ってても面倒見は良いし、剣の腕は確かだし、堅いとこが無くなってむしろ親しみやすいって言ってるやつらもいます」

「……そうか」

まあ真選組には他にも問題児が多いので、そのへんの順応性はあると思っていたので土方もほっと息をつく。

「むしろ心配なのは本人ですよね。通常業務は頑張ってくれますかね?」

「……大丈夫だろ。いざとなれば、近藤さんのためにガンバレ、って言ってやればあいつも……」

「無駄ですぜぃ」

沖田にひょっこりと話に割って入られて土方は眉間にシワを寄せる。

ここは副長室で当然沖田は居なかったのに、庭側の障子を開けて話しに入ってきたってことは、外で立ち聞きしていたということだ。

「総悟、勝手に話を聞くなと何度言えば……」

「銀時のことが知りたいんじゃねーんで?」

「…………」

銀時と一緒にいた時間は沖田のほうが格段に多いし、"無駄だ"という根拠も聞きたい気もする。

土方は溜め息をつきつつ諦めた。

「で? なんで"無駄"なんだ」

「近藤さんの言うことなんか聞くヤツじゃねーからでぃ」

「……何言ってだ。今までずっと近藤さんのために頑張ってきただろうが」

「だから、近藤さんのためじゃねねーんですよ」

「……誰のためだって言うんだ」

「あんたでさぁ」



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