原作設定(補完)
□その52
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嘆いている近藤や困っている山崎には悪いが、銀時的には逃亡場所として万事屋を選んでくれたことは嬉しい。
なので、
「そんじゃ、帰る前に土方くんの好きなものでも作ろうかなー」
上機嫌でそう言いながら椅子から立ち上がったのだが、土方からは思いもよらぬ返事が返ってきた。
「……帰らねー」
「え?」
「もう帰らねー。あんなとこ辞める」
「えええええぇぇ!!!?」
そんなことを言い出すぐらい深刻だとは思っていなかったが、近藤があんなに嘆いていた理由は分かった。
「ちょっ……まじでか。真選組辞めちゃうの!?」
「辞める。んで、ここに入る」
「……ここ?」
「万事屋。おれの敏腕で仕事とってきてやる」
「「えええええぇぇ!!!?」」
新八も加わって驚いてくれたので、ものすごい名案だとばかりに土方はドヤ顔をしている。
「トッシー、ここで暮らすアルか?」
「おう。毎日美味い飯食えるようにしてやるよ」
「まじでか! 毎日卵かけご飯食べ放題アルか!?」
「おかずもつけてやるよ」
「きゃほぉぉぉぉぉ!!」
「ちょっ、まず神楽をご飯で釣るのやめてくれる?」
「俺が仕事とってきたら、てめーもちゃんと仕事するだろ?」
「そりゃあ、土方くんのためだから馬車馬のように働きますけど……」
「本当ですか!? 土方さん、ぜひ、お願いします!!」
ご飯と金で釣られた子供たち+定春に歓迎されて、土方はさらにドヤ顔だ。
そりゃあ本音を言えば銀時だって土方がずっと側にいてくれたら嬉しいし、馬車馬のように働くと言ったことにウソはない。
が、それが実現、というか長続きしないことも分かるのだ。
「だけどさ、本当に真選組を放っておけんの?」
「できる。もういい、あんな奴ら」
「そう? 3日もしたらどうしてるのか気になってソワソワしちゃうんじゃないの?」
「……いえ、2日ぐらいじゃないですか」
「1日アル」
「……ぐっ……」
新八と神楽にまでそう言われたら土方も反論に困ってしまう。
ほんのちょっぴり、さっきの電話だけでもそわっとしていたからだ。
しゅんとしなってしまう土方に、銀時はやれやれという顔で笑った。
「アイツら今頃すげーー心配して反省してるぞ? 土方くんがいないとさ、それじゃなくてもダメな連中がますますダメになっちゃうじゃん?」
「…………」
「送ってってやるから、ご飯食ったら帰ろう?」
「……ん……」
家出した子供を説得するような銀時の言葉に、"戻るきっかけをくれた"のだからと土方は素直に頷いた。
1時間後、ご飯を食べて落ち着いた土方は、銀時の原付で送ってもらい屯所の前に着いた。
土方の居ない対応に追われているのか、塀の中は騒がしいが外には誰も立っておらず、土方はひっそりと帰ることができそうだ。
門をくぐる前に土方は足を止め振り返り、原付に跨ったまま見送っていた銀時に言った。
「さっきの……本当か?」
「ん?」
「俺のために馬車馬のように働く、って」
「ぶはっ、そこ? もちろんですぅぅぅ。本当に真選組に愛想を尽かしたときには、ぜひうちに入社してください。みんなで大歓迎するから」
にいっと笑ってそう言う銀時に、土方もふっと笑って屯所に入って行った。
早速誰かに見つかったらしく、
「あ!!! 副長が帰ってきた!!!」
「副長ぉぉぉぉ!! すみませんでしたぁぁぁぁ!!!」
なんて懐かれてる声が聞える。
きっと顔をしかめながら内心で嬉しがってるのだろうと思うと、銀時も嬉しくなりつつ背中の温もりがないのを寂しがりながら帰るのだった。
おわり
土方さんが切れて家出、というネタは実は何個かあります。
そっちを書いてないのに、急に浮かんだほうを書く。
土方さんを甘やかしている銀さんが好き。