原作設定(補完)
□その51
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「神楽」
「なにアルか」
「例えば……例えばよ、クリスマスのプレゼントとか何が欲しい?」
「ナイショ、アル」
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「って言われました」
「短っ!! メガネみてーにもうちょっと会話してヒントを聞き出せよ!」
「あの年頃の女の子は、お父さんと会話もしたくないもんだからねー」
「あんたお父さんじゃないでしょう。そのへんは僕もなんとかリサーチしてみます。土方さんはすみませんがサンタをお願いしますね」
「…………分かった」
まだ納得はしていなかったけれど、このまま嫌がってても逃げられそうにないので土方は観念してうなづく。
"好きか嫌いかで言えば嫌いだ"とは言ったものの、神楽と新八に対してはそう言えない程度、かつ、クリスマスにプレゼントしたくなる程度、には気に入っているのだから。
そんなこんなで"神楽のためのクリスマス"企画は密かに進行していたが、なかなか苦戦していた。
サンタコスは山崎に命じて密かに入手したものの、神楽へのプレゼントが未だに決まらない。
リサーチすると新八は言ったものの上手くいってないようだ。
こうなったら自分で直接聞いたほうが早いかな、と土方が思ったのは、見回りの途中でばったり神楽と遭遇したからだった。
「よう、ニコ中。頑張って働いてるアルか」
「……まあな。お前のところは暇そうだな」
「まあな。銀ちゃんにもっと真面目に働けって言うヨロシ」
見かけは少女なのに、憎たらしくもっともなことを言われ、銀時のアホ面を思い浮かばされた。
そもそも土方がいらぬ心配をしてるのはみんなアホのせいなのだから。
だが約束した以上、果たさなければという気持ちがあるので、
「…………そういやもうすぐクリスマスだな。お前は欲しいもんとかねーのか」
ド直球に聞いてみたら、土方がそんなことを言い出すとは思っていなかったのか、神楽にきょとんとした顔をされた。
10分後、神楽と別れた土方は深い溜め息をつく。
沖田と比べたら他の子供なんてみんな可愛いものだと思っていたけれど、
「……なかなかあなどれねーな……」
なんてしみじみ思うのであった。
24日。
今年はお妙が"身より実をとる"(家族とのクリスマスよりもすまいるでカモから金をせしめるの意)を実行したため、万事屋でひっそりとパーチーが開かれていた。
が、料理を銀時が担当した分、去年よりはマシなものがテーブルに並んでいて、神楽はまあまあ楽しそうにしている。
内心では銀時も新八も"土方(さん)が上手くサンタになりきってくれのか"を心配していたのだが、それは予想外に裏切られた。
夜だというのに玄関で呼び鈴が鳴り、応対する前にズカズカと上がりこむ足音。
土方が"私服"で明らかに大きなケーキの入った箱と、大きめの紙袋を持って現れた。
「よう」
「!!!!?」
サンタ役の土方が、堂々と素で現れたことにぎょっとする銀時と新八に対し、
「トッシー、メリークリスマスアル!」
「……メリークリスマス」
テンション高めの神楽に言われ、照れくさそうにそう答えた。
「ほら、ケーキ。と、プレゼントだ」
「まじでか! 何アルか!?」
「酢昆布一年分」
「きゃほぉぉぉう!」
色気も素っ気もヒネリもないプレゼントだったが、神楽は大喜び。
大きなケーキと大量の酢昆布に夢中になっている間に、銀時がすすすっと寄ってきて眉をひそめる。
「ちょっ、どういうことですかコノヤロー。なんですっぴんで来ちゃったの!?」
「……いいんだよ、これで」
「は?」
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「…………そういやもうすぐクリスマスだな。お前は欲しいもんとかねーのか」
「……もしかして、トッシーも短冊、見たアルか?」
「!? いや、その……」
「あれは銀ちゃんと、ついでに新八に見つかるようにわざとあそこに飾ったネ」
「……あ?」
「銀ちゃん、私たちはそっちのけで、クリスマスにお前と会えるかどうかばっかり心配してたアル」
「……そ、そうなのか?」
「だけど……クリスマスぐらい……まだ、私たちと一緒にパーチーしても罰は当たらないネ。あの短冊見たらきっと気にしてくれると思ったアル」
「…………そうか。なら、成功してよかったな」
「……もし、お前が一緒にパーチーに参加したいって言うなら、仲間に入れてやらねーこともねーアルよ。ケーキと……酢昆布でも持ってくるヨロシ」
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にいっと笑った神楽を思い出し、3人して振り回されたことに土方はやれやれと溜め息をついた。
その様子に首を傾げる銀時には、後で話してやろうと思う。
結果的には一緒にクリスマスを過ごせることになったのだから、まあ許してくれるだろう。
おわり
メリークリスマス、イブ!
何とか間に合った。
2人でイチャイチャするよりも、家族でイチャイチャして欲しい銀土。