原作設定(補完)
□その51
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「も、もうすぐクリスマスだねー」
「そうアルな」
「……こ、今年は海坊主さん、来るかなー」
「パピー? 来れないって手紙に書いてあったアル」
「そ、そうなんだー…………じゃあ、クリスマスのプレゼント貰えないねー」
「年明けたらちょこっと寄れるから美味いもん食わせに連れてってくれるネ。プレゼントは本物のサンタさんに貰うからいいアル」
「………………か、神楽ちゃん?」
「なにアルか」
「去年のサンタは……誰か分かってる?」
「パピーと銀ちゃんとゴリと九ちゃんとさっちゃんアル」
「……だよね……じゃあ、本物のサンタって?」
「パピーたちは本物のサンタに頼まれて、サンタをやってたネ」
「え!?」
「本物のサンタが一人で世界中の子供にプレゼントを配るのは無理ネ。だからパピーたちも、あちこちでみかけるサンタも、みんなバイトだって……でも本物のサンタにプレゼントを貰える良い子もいる、って言ってたヨ」
「だ、誰が?」
「そよちゃんネ」
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「そよ姫ぇぇぇぇぇ!! 単純で地球のイベントに弱い子になんてウソを教えてくれてんのぉぉぉぉ!!」
納得の理由に銀時は頭を抱えて叫び、相手がそよ姫だけに土方は沈黙を守った。
「まさか……そよ姫もサンタを信じてるんでしょうか……」
「んなこた、どっちでもいいわ! そよ姫はいいよ? そう言っときゃ家臣がサンタでもプレゼントでも用意してくれるから! うちの子はどうしたらいいの? うちの子にも用意してくださぃぃぃぃ!!」
「……別に大したことじゃねーだろ。去年と同じく誰かがサンタになってやりゃー済むことだろうが」
そよ姫を攻める銀時に、土方が呆れた顔でもっともな意見を出してくれたので、銀時はころっと態度を変える。
「そうだね。じゃあ、土方くん、お願い」
「はぁぁぁ!? なんで俺だっ」
「だって俺は去年やったし……新八、お前、やる?」
「無理ですよ! 僕がサンタやったって本物には見えませんって!」
「だろ。はい、決まり」
「お、俺だって本物には見えねーだろーが」
「フォロ方十四フォローくんのほうが臨機応変に対応できるでしょー。神楽もまさかおめーがサンタコスなんてしてくれるわけねーと思うはずだから、バレないって、だいじょーぶ!」
銀時の言い分も分からなくはないが、「そうか」と頷くのは躊躇われる。
"らしくない"のは自他共に認めることだし、第一、恥ずかしい。
「だからって……なんで俺が……」
ごねる土方に、銀時がビシッとズバッと言った。
「なんですか。神楽ちゃんがガッカリしてもいいんですか。おめー、神楽が可愛くねーの?」
銀時と付き合うようになり、万事屋に出入りすることが多くなったせいで神楽ともまあまあ仲良くなってきた土方の、良心を突くような言葉だ。
だが土方からはあっさり意外な答えが返ってくる。
「可愛いに決まってんだろ!」
「え、即答? いがーい」
「世の中の子供はみんな可愛いんだよ! ちなみにメガネ、おめーはものすごく可愛い!」
「ええっ!? あ、ありがとうございます」
「ちょっ……CP間違えたかと思って読むのやめられちゃうかもしれないよ、大丈夫?」
「あ? 何言ってんだ?」
「いえ、別に……土方くんが子供好きだとは知らなかった」
「好きとは言ってねー」
「え?」
「好きか嫌いかで言えば、嫌いだ」
「…………可愛いってのは?」
「短冊に"本物サンタさんに来て欲しい"なんて可愛いだろうが! 総悟なんかな、ずっと"土方が死にますように"って書いてたんだぞ!」
「……ああ……ソレ基準ですか……」
「死んでないんだからいいじゃん」
「気分悪いだろうが。だから、"それじゃあ普段言ってることと変わりねーな。ヒネリが足りねー"って言ってやったら、次の年の短冊に"来年の短冊には、土方が死にますように、と書かずに済みますように"って書いてあった……」
「……実質、死にますように、って書いてるようなものですね……」
「ヒネってるなー」
「だから、俺にとっては大人しくて普通の子供であればあるほど可愛いんだ」
だから神楽よりも新八のほうが可愛いらしい。
納得がいったところで、銀時は話を元に戻すことにした。
「うん、じゃあ、まあ、可愛い神楽のために土方くんはやってくれるよね」
「ぐっ…………ど、どうすりゃいいんだ」
「サンタの衣装を着てー、あ、プレゼントもよろしく」
「あ? な、何を買ったらいいんだ……」
「酢昆布一年分とかでいいんじゃね?」
「適当すぎませんか。去年はおもちゃ屋のチラシとか見てましたよ」
「あれはチラシが欲しかったんだろ」
「…………違うと思いますけど……」
「つーか、アイツ、ゲームとかやらねーじゃん。興味なさそーだろ、チマチマした画面でやるもんなんか」
「まあ、そうですね」
「そのへん、ちゃんとリサーチしてこいよ」
「したよ? さっき、一応聞いたんだけどさー」
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