原作設定(補完)
□その51
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#509
作成:2019/12/20
かぶき町にも"クリスマス"がやってきた。
来週の当日を控え、あちこちの店がクリスマスのデコレーションで飾り付けられたり、店員にサンタのコスプレをさせたり、定番の風景だ。
その中でも一際目立つのが、巨大なツリー。
どこぞから盗って……取ってきたらしい"モミの木"っぽい木に、これまたクリスマスの飾りがぶら下げられている。
ただ場所が場所だけに、子供向けじゃないおもちゃや、店のNO.1ホステスやホストの写真などが飾られていた。
『無理にクリスマスっぽくする必要もねーんじゃねーの』
どうせ飲んで食って暴れて、やる事はいつもと同じなのに、と銀時は小さく溜め息をつく。
そしてそんな巨大ツリーに、殊更クリスマスツリーとは関係ないものがぶら下がっているのを見つけた。
"弁天堂Oweeが欲しいです"
"スマホをください"
"彼女が欲しい"
長方形に切った折り紙に願い事が書かれている。
『七夕かよっ! ったく、なんでもありだな、こりゃ…………ん?』
呆れながら走らせた視線の先に、見覚えのある字と名前を発見した。
"今年こそ本物のサンタさんが来てくれますように 神楽"
まだまだヘタっぴな日本語だったがなんとか読め、銀時はたらりと汗をかく。
「……え……サンタ? 本物の? ちょっ、何言ってんの、この子……えぇぇぇぇ……」
30分前、同場所。
「巨大ツリーっていうアイデアは良かったけど……モザイクだらけじゃ宣伝にならないんじゃないのかなぁ……あれ? 短冊? あはは、間違ってるけど、書いてるのは子供みたいだからクリスマスっぽいと言えなくもな…………え、神楽ちゃん? さ、サンタ? 本物の?」
1時間後、同場所。
「そ、総悟のヤロー、どこ隠れやがった……こうごちゃごちゃしてちゃ見つけられねー……ん? これは……クリスマスツリーのつもりか? 卑猥なもん飾りやがって……公然猥褻物陳列罪で撤収させたほうがいいんじゃ…………これは、短冊か……これを処分するのは可哀想だな……あ? チャイナ? ……サンタ? 本物の?」
万事屋、緊急ミーティング。
「……で、どうする?」
神楽が遊びに出かけたのと同時に、銀時、新八、土方が集まって顔を付き合わせていた。
題材は、三人がそれぞれたまたま見つけてしまった、神楽の"願い事"のことだ。
最初に口を開いたのは、この緊急ミーティングに参加させられているのが不満な土方。
「どうするってなんだ。俺は、短冊のことを教えに来ただけであって……」
「せっかく来たんだから協力しなさいよ。神楽だって多串くんにあんなに懐いてるでしょー」
「土産持参のときだけな」
「でも、今週は土方さんが来るかなー、とか、たまには家に連れてこいよ、とか言ってますよ」
「土産持参してくるからな」
神楽なりに土方を気に入っていると思うのだが、付き合いの短い土方にはまだソレは感じられないらしい。
それでも神楽の短冊を気にして、こうして会議に参加してくれている。
「というか、"今年こそ"ってのは何だ.サンタが本当に居るって思ってんのか? 変なところで子供なんだな」
「夜兎なんで、クリスマスとかサンタってもの自体、知らないから仕方ないんです」
「良い子にしてねーから来ないんだって誤魔化してたんだけど、あまりにも楽しみにしてるんで去年は俺がサンタになってやったんだが……いろいろ邪魔が入ってグダグダになっちまったんだ」
「サンタになるぐらいでなんでグダグダになるんだよ」
「原因の一人はおたくの局長だからね」
「近藤さん? …………ああ、そういえばサンタの衣装で出かけていったな」
「え? あのゴリラ、屯所からあの格好で来たの?」
「近藤さんはゴリラじゃねー。あの人はなんでも形から入る人なんだよ!」
「それフォローになってないから…………でもよ、あの時、最後には俺らがサンタやってたって気付いてたよな、アイツ。なんでまだサンタが居るって信じてんの?」
グダグダにはなったけれど、これでもうサンタにならずに済むと思っていたのに。
面倒なことになったなと思っている銀時に、新八が困った顔で教えてくれた。
「それについてはさっき、直接神楽ちゃんに聞いてみたんですが……」
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