原作設定(補完)
□その51
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一方、万事屋では。
「ただいまー。銀さーん、特売のいちご牛乳、一本しか…………って、あれ、銀さんは?」
買い物から帰ってきた新八が、ジャンプを机に開きっぱなしにしたまま姿のない銀時の所在を、変わらずソファに寝転んでテレビを見ていた神楽に訊ねる。
「出かけたアル」
「え!? 僕に買い物に行かせて……まさかパチンコに行ったんじゃ」
最近口うるさく注意したのでしばらくギャンブルを我慢していたようだったのに、と顔をしかめる新八だったが、
「電話があって出て行ったネ」
「え、そうなの? 仕事の依頼かなー」
「デートアル」
「そうなんだ、だったらいい………………デートぉぉぉぉ!?」
予想外の答えが返ってきて動揺し荷物を落してしまう。
神楽は"大袈裟アル"という顔でソファに座りなおした。
「で、デートって……誰と!?」
「……言ってなかったネ」
「……そう……」
2人の間に少しの間沈黙が流れた。
普段ちゃらんぽらんとしていて恋愛なんてしていなさそうな銀時と、始終一緒にいる2人。
それでも付き合いが長いだけにささやかな機微も分かるのだ。
分かってはいるけれど、お互い口にしていなかったこと。
「…………土方さん、かな……」
「気付いてたアルか?」
「まあ……分かるよね。銀さん、以前とは様子が違うし」
「あれでも隠してるつもりネ」
「だろうね。言い訳とかしてるけどちょっと、無理があったりするし」
「あと、夜中にこっそり抜け出したりしてるアル」
「え!? そ、それって……そういう?」
「しっぽりヤってるアル」
「し……ヤ……そ、そうなんだ……ま、まあ……2人とも大人なんだから……うん……」
思春期の息子が親の情事を知ってしまったような顔をしていた新八だったが、ふと寂しそうな表情になる。
「……銀さん、いつまで隠しておくつもりかな」
「シャイでヘタレアルからな。言って欲しいアルか?」
「だって……あんなに土方さんこと好きなんだから言ってくれたら応援もできるのに」
「……恥ずかしいんダロ」
「いや、恥ずかしがるところはもっと別にあると思うけどね」
「……相手がトッシーなのはいやじゃねーアルか?」
「え? …………初めて気付いたときは驚いたけど……なんか銀さんが誰を好きになっても、"ああ、そうなんだぁ"と思える、ような……」
「ふーん」
せっかく質問に答えたのに神楽の反応は素っ気無い。
我ながら恥ずかしいことを言ってしまったかな、なんて思った新八だったが、
「……分かるアル」
ぽそっとそう言われて、ちょっと嬉しくなった。
「普段の銀さんはいい加減でマダオで全然信用できないんだけど」
「イザってときはちゃんと間違いないモノ、選んでるネ」
「だからあんなふうに本気で誰かを選んだんなら、大丈夫だろう、って」
「まあ、トッシーならそれこそ間違いない、アルけどな」
「ははは。銀さんがダラケてても、ビシッとバシッと言ってくれそうだしね」
「見栄っ張りだからトッシーの前では良いカッコしそうアル」
「そしたらちゃんと仕事もしてくれるかな」
「いっそのことトッシーのほうに話をつけて、銀ちゃんには私たちが知ってるのを隠しておくという手もアルネ」
「そうしたら銀さんがダラダラしてるとき土方さんに報告して叱ってもらえそうだね」
「三食卵かけご飯も文句も言わず食べるように言ってもらうアル」
「特売のいちご牛乳が一本しか変えなくてもグチグチ文句を言わないように、言ってくれるかなー」
「定春のドッグフードをおやつにボリボリ食べるのも止めさせるネ」
「わん!」
「定春も何かあるアルか? 頼んでやるヨ」
新八と神楽で話を盛り上げていたら、ソファの横で寝ていた定春が一声鳴いた。
自分の話がでたので会話に混ざりたいのかと思ったら、なにやら視線は扉の閉まったままの玄関を向いている。
「あれ? もしかしてお客さんかな。はーい、ちょっと待っ……」
急いで応対しようとした新八が扉を開けると、見覚えのある銀髪天パーと着物の男が顔を覆ってしゃがんでいた。
その背後で土方が恥ずかしいような情けないような微妙な顔をして立っている。
「ぎ、銀さん!? 土方さん!? な、何してるんですか、こんなとこで……」
2人の話をしていたところだったので焦る新八だったが、焦っていたのは銀時も同じだった。
新八と神楽に、土方のことをどう説明したらいいだろう、なんて思いながらこっそり帰ってきたところで、2人の会話を聞いてしまったのだ。
隠しているつもりだったのにすっかりバレていた上、情けない話まで土方にバラされた。
まあ、手間が省けた、とも言える。
「……ひ、土方くんとお、お付き合いをしています。これからちょこちょこ万屋に来てもいいかなぁ……」
項垂れたままド直球にそう訊ねると、2人は今まで見たことがないぐらいの"イイ顔"で笑った。
「当たり前じゃないですか! いつでも来てください!」
「銀ちゃんいないときでも遠慮するなヨ」
と歓迎されていまい、嬉しい土方と、腑に落ちないような顔の銀時だった。
おわり
最初は2人の会話のシーンだけだったので、
身がないような話になってしまった……気がする。
こうやってわちゃわちゃする四人が好き。