原作設定(補完)

□その51
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だけどはっきりさせなくてはならない。

これは銀時にとっても大事なことだから。

「今のさぁ、マジで?」

「…………なにがだ」

シラを切ってもうやむやにしても解決しないと分かってるくせに、土方は一応とぼけてみせる。

なので銀時もとぼけた感じに追求してやった。

「俺のこと好きとか、だけどそれが嫌で忘れるための薬を飲んだとか」

銀時の言い方から、故意に薬を飲んだことを気付かれた、ことを土方も知る。

忘れたいから押収品に手をつけるなんて切腹ものの違反を犯したのに、記憶は消えず、さらに本人にバレて問い質されているなんて、情けなくて逃げ出したい。

だがどうやら、しばらく眠ったままだった体は機敏に動くことができなそうで、とても銀時から逃げ切ることは無理だ。

だから布団に寝たままの情けない姿だけれど、言いたいことは言ってしまうことにした。

そしてさっさと本当に終わりにしたい。

「……だったら、なんだ」

「あ?」

「気色悪いこと知ってムカついて文句でも言いてーのか。マヌケな姿を見てバカにしてーのか。だったらさっさとしろよ。それで気が済んだらさっさと帰れ」

「んなこと一言も言ってねーだろ。起すのに協力してやったのにヒドくね?」

「……っ……頼んでねえ! ……余計な真似……しやがって……」

「……可愛くねー……」

ポツリと呟いた銀時に、土方の胸は"まだ"痛んだ。

普段喧嘩ばかりしていたときのほうがもっと酷いことを言い合っていたはずなのに、この状況ではこんなにも傷む。

自分から突き放したのに、酷いことを言ったのに、銀時に冷たくされて傷つくなんて滑稽すぎた。

だから先に拒絶の言葉を吐こうとしたのに、銀時が思いもよらぬことを言い出した。

「そんなんだから、俺が全く気付かないねーんですよ」

そっぽを向いたままの土方に、言い聞かせるように続ける。

「今日だけじゃなくずーっと、ずぅぅぅぅぅぅっと、そういう態度だったろうが。それなのに、好きだったとか、叶わない気持ちは忘れたいとか、勝手じゃね? 普通はもうちょっとぐらいアピるもんじゃないんですかコノヤロー」

ようくやく土方が、何言ってんだコイツ、みたいな目を銀時に向けた。

まあ分からないだろう、と銀時は思う。

銀時が気付かなかったように、土方が気付くはずもない。

「……おめーは、心底嫌ってるヤツと喧嘩になるって分かってて、遭遇率が高い店に通い詰めたりできんの?」

「…………」

何言ってんだコイツ、という顔は続く。

「お、俺はそんなことできねーし! 嫌に決まってんだろ、喧嘩なんて面倒くさい」

「…………」

「だ、だけど、俺は、喧嘩になっても、いつも団子屋で、ま、待ってた、わけで……」

「……団子が好きだから……」

「好きだけども!! それだけじゃねーだろうが! つまり、その………ああっ、もうめんどくせぇぇぇぇ!!」

"その"可能性にちっとも気付かない土方と、これ以上"会話"するのが耐えられなくなった銀時は、実力行使に出た。

きょとんとした顔で横になっている土方に覆いかぶさるように体を寄せて、そのまま唇を重ねた。

さすがに"なに"をされているのか分かって硬直する土方に対し、銀時は"ちゅーなんて久しぶりぃ"なんて呑気なことを考える。

そして体を離してもまだ硬直している土方に、

「ちゅ、ちゅーできるぐらいおめーのことが、す、好き、だったんです」

態度で表してトドメを差してやった。

まあいきなりだったけれど、ここまでしたんだから土方も気付くだろう、と期待したのに、土方は呆然としたまま両手の指で掛け布団の端っこを掴み、すすすすっと上に上げて顔を隠してしまう。

そして布団の中から、

「う、嘘だぁぁぁぁぁぁ」

と情けない声を発した。

土方の動揺とは裏腹に、

『うわっ、なにその可愛い仕草! ちょっ、待っ、何隠れちゃってんのぉ!?』

なんて銀時の胸はときめく。

「嘘じゃねーし!」

「てめーだって、ずーっと、ずぅぅぅぅぅぅっと、あんな態度だったろうがぁぁ、信じられるかコラァ」

「う……そ、それはおめーがあんな態度だから、俺だって気付かれないように努力した結果なわけで……」

知ってしまえばいつもの"似たもの同士"というオチであり、なのに真選組どころか関係者を巻き込む大事にしてしまった。

きっとこの事実を話しても話さなくても、喧嘩しなくなった2人を見たら気付かれる。

これからかくことになる恥を思うと転げまわりたくなるけれど、とにかく今は目の前の土方だ。

銀時は布団の中で真っ赤になってるだろう土方に言った。

「……つーことで……そろそろ出てきてくれませんか……」

「…………まだ、無理……」

「まだってどのぐらい?」

「……一ヶ月ぐらい……」

「長すぎるわぁぁぁ!! もう銀さん、いろいろと無理ですよ!」

「……じゃあ、10分……」

「短っ! ……うん、なら、待つ」

土方が布団の中で一生懸命気持ちを落ち着かせて"らしく"しようとしているのを想像して、銀時はニヤケながら土方が出てくるのを待つのだった。


 おわり



キスから以降のシーンを書きたかっただけなので、
オチをどうするかどうか考えてなかった(笑)
いつもいつも中途半端ですみません。
でもいつもどおりのバカップルです。

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