原作設定(補完)
□その51
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#508
作成:2019/12/18
人の気配がして目を覚ました銀時は、暗闇の中にうっすらと浮かぶ赤い服の人物に対して声をかける。
「……何してんの」
眠っている部屋に黙って侵入されてていたにもかかわらず、銀時の声が冷静なのはその人物が誰だか分かったから。
かすかに香る煙草の匂い。
じっとしていれば誤魔化せるかもしれないと思ったのか返事はなかったが、
「ひーじかーたくーん」
とはっきり名前を呼ばれて観念したようだ。
土方は振り返りざま、
「め、メリークリスマース」
とおどけてみせるが、銀時はしらっとした表情のままで言った。
「どういうつもり?」
「み、見れば分かるだろ。サンタクロースだ!」
「見れば分かるけど……今日はまだ18日なんですけど……まあ、ちょっとこっち来て座んなさいよ」
銀時が引いているので土方はしゅんとしながら布団の横に座る。
わざわざ衣装まで着て気の早いサンタクロースをしに来る、なんて、らしくないことをなぜしたのか。
「で?」
「…………24日は……仕事で無理だ……」
「……ああ……うん、分かった……」
「…………」
「…………」
「…………」
「……え? だから?」
「……だから……きょ、今日……やっておこうかと……」
「はぁぁぁぁ!? 適当すぎね? イブ・イブ・イブ・イブ・イブ・イブって、もうクリスマスでもなんでもなくね!?」
「し、仕方ねーだろ! どう調整しても今日しか時間が取れなかったんだよ!」
「……だったらせめて堂々と来れば? なんでこっそり忍び込んでんの?」
「普通に来るつもりだったんだけど……ちょっと遅くなっちまって……休めないこととか、早すぎることとか、どう説明しようって考えてたら……電気が消えちまったんで、仕方なく……」
自分でおかしなことをしていると分かっているためか、ずっとしょんぼりな表情の土方にそれ以上は怒りづらい。
が、なんでこんなことまでしてるのか気にはなる。
「……だったら無理にクリスマスなんてしなくていーのに……」
いい年をした大人なのだからそんな行事ぐらい、仕事だと言われれば我慢するのに。
そう思ったらやっぱりちょっと呆れ声になってしまったのか、土方は不貞腐れたように言い返してきた。
「……てめーが……24日に会いたいって言ったんだろうが……」
「……そりゃあ、お約束ですし、言ったけど。だからって別に……」
「最初のクリスマスなんだからっ……ちゃんと……してやりたかったんだよ……」
"2人で迎える最初のクリスマス"。
身体の関係から始まって、そのままでも別にいいけど形だけでもちゃんとしてみるかと交際を提案してみたら、あっさりと了承してくれた。
土方のほうも"まあ、いいか"という程度の気持ちだったのかと思っていたのに、そんなことを考えてくれてたなんて。
銀時が驚いているような意外だと思っているような、そんな顔をしているので土方も居たたまれなくなった。
「そ、それだけだ! 悪かったな、寝てるとこ邪魔して! もう帰……」
そう言って逃亡しようとする土方の手を銀時が掴む。
驚いたし意外だけど、こんな可愛いことをされて嬉しくないわけではないのだ。
「せ、せっかく来たんだから……ゆっくりしていきなさいよ……」
「…………おう」
そして引き止めてくれたことが土方も嬉しかった。
2人だけのちょっと早い初めてのクリスマス。
おまけ
「わざわざサンタ衣装、用意したのか?」
「いや。クリスマスの警備には、毎年何人かの隊士にサンタにカモフラージュさせてんだ。その衣装を虫干ししてて……」
「……だからって着なくても………ああ、着てみたかったの?」
「そ、そうだよっ。一度ぐらいいいだろうがっ」(照れ)
「(ぷぷっ、可愛いぃぃぃ)……ん? なんか買ってきてくれたの? なんか甘い匂いがする」
「ああ。クリスマスケーキはまだなかったから、普通のやつを」
「まじでか!………………ちょっ……大きすぎね?」
「そうなのか? 一番大きいのを頼んでみたんだけど」
「土方くん、たいして食わないじゃん。さすがにコレを一人で食ったらヤバイかなー」
「チャイナにも残してやったらいいだろうが」
「どう説明すんのよ、土方くんが持ってきてくれたって? 一足お先のクリスマスケーキだって?」
「…………は、恥ずいな」
バーン!
「そんなことないアル! ケーキに罪はないネ!」
「うわぁぁぁぁ! お、起きてきたのか!?」
「もさもさと話し声が聞えてきてうるさかったネ。ケーキで許してやるアル」
「……そりゃあ、どうも」
"2人だけのちょっと早い初めてのクリスマス"、失敗。
おわり
書いてて、前に似たような話を書いたなぁ、と思いながら書きました(笑)
たまにはクリスマスにテンションが上がる土方さんというのもいいかな、と。