原作設定(補完)

□その51
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#507

作成:2019/12/15




昼過ぎの万事屋に電話の呼び鈴の音が鳴り響く。

新八は買い物へ行っていて留守で、神楽はソファに寝転んでテレビを見ている、となると、デスクでジャンプを読んでいた銀時が電話を取るしかない。

面倒くさそうに受話器を上げて、気だるそうな声で応対するが、

「はいはーい、万事屋銀ちゃ……!!! は、はい!! 分かりました!! すぐ行きます!!」

急に元気な声で応対する銀時に、神楽が何事かと視線を向ける。

バタバタと慌てて和室に飛び込み羽織を着込んだ銀時は、神楽と目が合ってヘラッと笑い、

「ちょ、ちょっと出かけてきまーす」

「仕事アルか?」

「いや、違うけど……うん、ちょっとねー」

「……いってらっしゃいアル」

「い、いってきまーす」

煮え切らない態度で家を出た。

急いで向かったのでかぶき町のはずれにある茶屋、の2階。

昔は茶屋の2階といえば、いわゆるラブホテルのご休憩の意味で使われることが多かった。

この店も以前はそうだったのだがラブホがあちこちに出来て利用する客も減り、後片付けも面倒だと止めている。

が、特別な客のために普通の意味の休憩所として貸し出していた。

銀時がその部屋に入ると同時に、少々ゴツくて温かいものが体当たりしてきた。

「遅ぇ!」

「目一杯急いできましたぁ」

「早く座れ」

「はいはい」

眉間にシワを寄せる土方の目元にはくっきりクマが浮かび、お疲れでイライラしているのが分かる。

銀時は大人しく従って畳みの上にしゃがむと、隣に並んで座った土方のふとももに頭を"乗させられた"。

一見すれば"膝枕"なのだが、土方の目的はそれじゃない。

もふんと銀時の髪に手の乗せて、もふもふもふんとかき回す。

それを何度か繰り返していたら、土方の眉間からシワがすーっと引いていった。

そう、膝枕ではなく、ストレス解消のために銀時の髪をもふるのが目的なのだ。

されている銀時も最初は「何コレ、なんの意味があんのコレ」と文句を言っていたものの、土方が本当にコレで気が晴れるようなので諦めた。

そしてもふもふで癒やされたあと、

「もういいぞ」

そう言われて体を起こした銀時に、ぎゅうっと抱きつく。

銀時によしよしと抱き締めてもらい、それでようやく身も心も癒やし完了となるのだった。

限界ギリギリになるとこの部屋に呼び出されて、そんな他愛もないスキンシップをする、という日が月に一、二度。

もちろん、一緒に酒を飲んだり、深夜に会って"大人なお付き合い"というものも別にちゃんとしていた。

だが、こんな触れ合うだけの時間を土方が欲しているので、銀時は呼び出されたらできるだけすぐに駆けつけているのだ。

しかし"ギリギリまで我慢して"じゃなく、もっと気楽に癒せる時間と場所があってもいいんじゃないか、と考えていた。

肩に頬を乗せている土方の頭を撫でながら、

「……あのさ……俺、たちのこと……新八と神楽に話さねー?」

そう声をかけると、閉じていた土方の目が開く。

姿勢はそのままで視線を向けられ、

「なんでだ」

と問われるが、小首を傾げているようなその姿にときめきながら銀時は答えた。

「うち……万事屋のほうがもっとゆっくりくつろげるだろ? 飯も食えるし酒も飲めるし。だけど夜限定じゃ時間が合わないときもあるし、毎回神楽を追い出すのも無理があるから……アイツラに言っちまえば、いつでも来て休めるしさ……」

「……んー……」

2人のことは今のところ誰にも言ってないし、以前より喧嘩しなくなったなー、という程度でそれ以上のことは気付かれていない。

それを新八と神楽に宣言することのメリットとデメリット。

考え込む土方に、

「あ、それに、定春にももふれる」

なんとなくそう言ってみた銀時だったが、思いの他効果があったようだ。

土方はばっと体を起こし、

「分かった。じゃあ、行こう」

「え!? 今!?」

「家にいるんだろ? 後で言うなら今でも同じだろうが」

「……えっと、まあ……いいけど……」

定春か? 定春にそんなにもふりたいのか?

意気揚々と支度を始める土方に、"もふる"に対してのお役御免になるのがちょっと寂しいと思う銀時だった。


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