学園設定(補完)
□同級生−その5
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#101
作成:2019/07/29
玄関のチャイムが鳴ったので出たら、ドアの向こうで十四郎が露骨に不満そうな顔をしている。
「……なんで金時なんだ」
「いや、なんでって言われても……俺のせいじゃないから」
くやしいので俺は一応反論してみた。
それでもむすっとしている十四郎に、やれやれという顔で溜め息をつく。
マンションの隣に住む十四郎は、小さい頃にここに越して来てからの幼馴染だ。
十四郎ががっかりしているのは出迎えたのが銀時じゃなかったから。
髪の色が違うだけで姿はそっくり同じな双子の弟なのに、十四郎は昔から銀時のほうがお気に入りだった。
高校生になったころ、それが"特別な感情"に変わったのに気付いた俺に気付いた十四郎は、相談とか愚痴とかこぼすようになったのだ。
今日も「一緒に夏休みの課題をやろう」と銀時に声をかけたのに、俺が出てきた=銀時が居ない、といのでむくれている。
「……銀時は?」
「どっか出かけた」
「……なんで」
「知らない」
「どうして引き止めないんだよっ」
「一応言いましたぁ。それでも出かけちゃったんですぅ」
そう言ってやったら十四郎は俺を睨んだあと、急にしゅんと肩を落として寂しそうな顔になる。
「……アイツ……彼女でも出来たのか?」
「はあ? 出来るわけねーだろ。俺と違って女ウケしそうなこと、なにも言えねーやつなのに」
「……お前がそう思ってるだけで、アイツは……けっこう優しくて人気あるんだよ」
「まじでか!」
衝撃的事実に俺は動揺してしまった。
ガキのころから俺と比べられて、おもしろくない、つまらない、素っ気無いと言われていた銀時だったし、俺から見たら今でもそんな感じなのに、なんで高校生になったらソレがウケてんの?
俺だってめっさ優しいし、喜ばすようなこと何でも言えるし、なんでもしてやれるし、将来はもうホストになるしかねーなって思ってるぐらい良い男なのにぃぃぃ!!
「じゃあ、帰る」
「……え……」
俺が苦悩の叫びを上げているあいだに、十四郎はそう言ってドアを閉めようとしているところだった。
それを追いかけてドアを開け、廊下の十四郎に声を掛ける。
「おい、勉強は?」
「……お前と勉強しても捗らないからいい」
「銀時と勉強したって捗らないくせにぃ」
からかうようにそう言ったら、いーっと顔を歪めて十四郎は隣の部屋に入ってしまった。
それを見送って、俺は"本当に心配なんてしなくていいのに"と思いながら部屋へ戻る。
部屋の隅には、件の弟が小さくなって座っていた。
「……十四郎、帰ったぞ」
「……あ、そう……」
「勉強ぐらいしてやりゃあいいのに」
応対させられた上に、責められたり慰めたりショックを受けたりさせられた仕返しにそうボヤいたら、キッと睨まれて、
「あんなに可愛い十四郎とせ、狭い部屋で一緒に勉強なんかしたら、どうなっちゃうかわかんねーだろうがぁぁぁ!!」
と鬱陶しいことを力説された。
十四郎の気持ちを知っている俺は、
「……どうにかなっちゃえばいいじゃん」
そう言ってやったのだが、残念なことに銀時は十四郎の気持ちを知らない。
「できるわけねーだろ!! そんなことしたら十四郎が可哀想じゃん! ずっと仲の良い幼馴染だと思ってた俺に、そ、そんな、や、やらしいこと考えられてたなんて知ったら、ショックじゃん!!」
十四郎はそんなやらしいことしてもらっても良いと思ってるけどね。
が、俺はそれは教えてやらなかった。
「あ、そ。じゃあ一人で悶々としてれば。俺はおデートに行ってきまぁす」
銀時が背後でブツブツ言っていたが聞かずに部屋を出た。
2人が両思いなのに気付いたけれど、それを教えてやったらつまらないし、ほんのちょっぴりだけ寂しいじゃん。
なのでもう少し2人をからかって楽しもうと思いました。あれ、作文?
追伸
秋になる前に俺の知らないところでお互いの気持ちを知った二人に、俺がそれを隠していたのがばれてガッツリ怒られました。
おわり
金時の一人称で書きました。
一人称は割りと書くのが楽なんですが、書きなれないので、
変な文章があってもスルーしてください。
ま、一人称じゃなくても変な文章多いんですけど。
金時(双子設定)がたくさん書けて楽しかった。