学園設定(補完)

□逆3Z−その5
18ページ/19ページ

#106

作成:2019/10/06




「銀時、9日は空いてるか? 空いてるな? じゃあ、そういうことで」

「勝手に決めんな、ヅラ」

「ヅラじゃない、桂だ。貴様のアレに決まってるだろ」

「アレ?」

「誕生日じゃあ、めでたいのぅ」

「……ああ。なんで9日?」

「当日はどうせ愛しのハニーと会うんだろうが」

「…………高杉、"愛しのハニー"って言葉が似合わなっ」

「うるせー、色ボケヤロー」

「はぁぁ? 誰が色ボケだコノヤロー」

「2人とも落ち着け。とにかく、そういうことだから前日に祝ってやろうとしてるのだ」

「……別に、10日でもかまわねーよ」

「なんじゃあ、土方とデートはないがか? 昔っから"お誕生日デート"を楽しみにしてたじゃろ」

「……平日だしなぁ、先生、会ってくれねーもん」

「そうなのか? でもケーキぐらい学校で食べたらいいだろう」

「いやですぅ。2人っきりでまったりケーキ食って手料理も食いたいしぃ」

「へー、アイツ、料理なんてするのか」

「しないよ。俺が作る」

「……自分の誕生日なのにか?」

「せっかくなら美味いもの食いたいだろ。俺が作ったほうが早いしね」

「器用そうに見えるじゃがの」

「全然。すげー不器用。ピーラーの使い方だって知らないし、すぐ焦がすし、味は濃ぃし」

「まあ、男だから料理はできなくても仕方ないんじゃないか」

「あと、片付けも苦手。部屋とか超キタナイ。よく一人暮らししてるよなー」

「…………まさか、お前が毎週アイツの部屋に行くのは……」

「家事全般? だから俺のこと毎週歓迎してくれるんだー」

「……それは恋人じゃなくてお手伝いなのではないか」

「いいの! 俺にはそういうの全部まるっと可愛いんだから!」

「あっはっは、恋は盲目じゃあ」



という生徒の話を立ち聞きしてしまった土方は、眉間にシワを寄せていた。

『あのヤロウ、ベラベラと……』

不機嫌丸出しの顔でその場を離れて職員室へ戻る。

不器用だとか片付けられないとか個人的なことをベラベラと喋った上に、恥ずかしげもなくノロケたり。

付き合っていることを秘密にしているわけじゃないけれど、おかげで銀時の周りの悪ガキ共には軽んじられてる気がした。

教師なのにすっかり"友達の恋人"扱いだ。

だからこそ土方には言わない本音というやつが出たのだろうが。

『……"お誕生日デート"ってなんだ、ガキか…………ガキだったな……』

銀時はいつでも土方に迷惑をかけないように、我が儘を言わない。

土日に土方のアパートに来ては嬉しそうに家事を全てやってくれて、むしろ甘えているのは自分のほうじゃないかと思えてきた。

土方は溜め息をついてから、仕方ないという顔で決意する。



10月10日。

平日だというのに土方のアパートに向かっていた銀時は、ちょっとドキドキしていた。

昼休みに土方からのメールで、

"今日、家に来い。時間は20時ごろ。ちょっと遅いが、その前には絶対来るなよ"

という謎の注意書き付きで誘われた。

悪友たちに話したように、平日は学校のあとで疲れているから会ってくれたことはない。

なのに今日、誕生日に呼んでくれたということは、念願の"お誕生日デート"をしてくれる気になったのだろうか。

「誕生日だってのは知ってるはずだし、わざわざ家に呼んでくれたってことは……もしかして"プレゼントは俺だ"的なラブイベントまで!? きゃー、先生のえっちぃぃぃ」

テンションは上がりっぱなしで学校が終わったらすぐにでも行きたかったのだが、機嫌を損ねても困るのでぐっと我慢した。

20時と同時にアパートのチャイムを鳴らし、出迎えてくれた土方は……なんとなく疲れ顔。

「……よくきた」

「ご招待ありがとー! 俺、嬉し…い………!?」

ウキウキと部屋に入った銀時は、えもいわれぬ匂いに動揺する。

焦げたような酸っぱいような甘いような、全部混ぜてぐちゃぐちゃにしたような匂い。

その正体は奥の部屋に入ってすぐ分かった。

テーブルに並べられた、"おそらく"失敗した料理の数々。

"おそらく"と仮定したのは、料理の上には土方の大好きな黄色いヤツがいっぱいかかっていて見えなかったからだ。

これは?、という顔をして土方を見た銀時に、気恥ずかしそうに答えてくれる。

「……た、たまには手料理でも……と思ったんだけど…………だ、大丈夫だ、マヨネーズがかかってればなんでも美味いぞ!」

失敗したからマヨネーズで誤魔化した、らしい。

マヨネーズで誤魔化されるのはマヨラーだけだよ、とは言わなかった。

銀時のためにマヨネーズ抜きの料理を、頑張って作ってくれただけでも十分嬉しいし、銀時の好きなイチゴのホールケーキまで用意されている。

料理がこの様子ではきっと台所はものすごいことになっていて後片付けが大変だろうけど、

「……た、誕生日、おめでとう」

「ありがとう、先生」

祝ってくれた土方に、銀時は嬉しそうに笑った。



 おわり



土方さんの不器用設定好きだぁ。
原作設定だと隊士がやってくれそうだけど、
学園設定はむしろ"汚部屋"でもいい。
それを世話する銀さんが超可愛い。

次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ