学園設定(補完)
□逆3Z−その5
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#94
作成:2019/03/09
まったりねっとりとした逢瀬の時間を過ごした土曜日の夜。
銀時はベッドの上にちょこんと座り、寝転がったまま煙草に火を点けた土方に言った。
「せ、先生……お、俺……卒業したら、ここに引っ越してきてもいいか?」
卒業を控え、もうじき登校もしなくなる。
その上、身に付けたい技術を学べる学校が他県にしかなく、春からは離れ離れになってしまうから正確には一緒には暮らせない。
でもここへ戻ってきていい、と"約束"を取り付けたかった。
生徒と教師。
面倒なことだらけの立場だったけれど、はっきり言って2人は上手くいっていたと思う。
土方は教師っぽくツンデレだったけれど、二人きりになると積極的すぎるぐらい積極的で、ラブラブでエロエロに上手くいっていた。
だからこれからもこの関係を続けられると思って言ったのに、
「ダメに決まってんだろ」
土方は嫌そうにそう答えた。
「……え? ど、どうしてっ」
「てめーのとの関係は在学中までだ。卒業したてめーに興味はねー」
「えええぇぇ!? な、なんで!?」
「近くにいつでも会えていつでもヤレる相手が欲しかっただけだ」
土方の言うことはけっして大げさではなかった。
休みはもちろん、平日に呼ばれて会うこともあったし、学校で致したことも何度かある。
ただ人よりちょっと……すごく性欲が強く、銀時とのエッチを楽しんでくれてるだけかと思っていた。
だって、二人きりのときは優しいし可愛いし楽しそうだったし。
好かれていると思ったのに、そうじゃなかったなんて。
「……お、俺、セフレ扱いだったの?」
「ちゃんと好きだし、ちゃんと付き合ってただろ。だけど離れてまで続ける気はねーよ」
そうきっぱりと言われた。
悲しくて悔しくてついつい、
「……じゃあ、卒業しない。来年も先生の側にいる」
なんて言ったら、土方は明らかに不機嫌になって眉間にシワを寄せる。
「行きたくて勉強頑張って入った学校だろうが。んなくだらねーことでパーにするようなヤツと付き合うわけねーだろ」
完全に怒らせてしまって、その後はロクに口もきかないで部屋を出た。
あんな言い方をしていたけれど、銀時を学校に行かせたい、人生を棒に振ってほしくない、という思いが入っていたことを知っている。
ちゃんと好かれていたし、大事にされていた。
だけど"近くに居ないなら必要ない"と言われたら、もう銀時の気持ちだけではどうしようもない。
寒い家までの帰り道。
いつもなら、いつまでも消えない土方の体温が腕の中から消えていくような気がした。
結局、あの後は二人きりで会うことなく卒業式の日を迎えた。
会いたくなれば電話してくれるだろうと思っていたのに、それもなかった。
それまでは週末にはもちろん、平日にだって呼び出しの電話なりメールなりをくれていたのに。
あんな話になったのだ。
卒業前でも学校に来なくなった銀時にはもう用はなく、在校生から次の相手を見つけたのかもしれない。
そんなことを考え、それを確認することもできないまま今日になってしまった。
卒業したら本当にもう終わりになってしまう。
だから改めて気持ちを確かめたくて、早く登校してくれるように土方にメールを出していた。
まだ生徒が登校するには早い時間、二人で何度も会った教科室に行くと土方は待っていてくれた。
「卒業、おめでとう」
土方はそう言って小さく笑ってくれたが、今までのように嬉しそうな笑みではない。
銀時が何を言い出すのか分かっていているから、のようだった。
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